すれ違う気持ち
⸻
あの日から。
「二人って仲いいよね」
そんな言葉を何度も聞くようになった。
⸻
海人は少しだけ考えるようになる。
⸻
(あんまり一緒にいると……)
⸻
(茉白、からかわれるかも)
⸻
それは嫌だった。
⸻
だから。
⸻
休み時間になっても、
少しだけ距離を置くようになった。
⸻
「海人!」
「サッカーやろう!」
⸻
「おう!」
⸻
友達の輪へ走っていく。
⸻
その様子を、
茉白は静かに見ていた。
⸻
(……あれ)
⸻
最近、
海くんがあんまり話しかけてこない。
⸻
何かしたかな。
⸻
嫌なこと言ったかな。
⸻
思い返しても分からない。
⸻
昼休み。
⸻
茉白が本を読んでいると、
海人が近くを通る。
⸻
(……海くん)
⸻
声をかけようとした。
⸻
でも。
⸻
海人は友達に呼ばれ、
そのまま走って行ってしまった。
⸻
「……そっか」
⸻
小さく笑う。
⸻
でも、
少しだけ寂しかった。
⸻
放課後。
⸻
海人は一人で帰ろうとしていた。
⸻
(これでいい)
⸻
(この方がいい)
⸻
そう思っているのに。
⸻
「海くん!」
⸻
後ろから声がする。
⸻
振り向く。
⸻
茉白だった。
⸻
少しだけ息を切らしている。
⸻
「一緒に帰ろ」
⸻
その一言に、
海人は少し困った顔をする。
⸻
「……今日はいい」
⸻
思わず言ってしまった。
⸻
茉白の笑顔が、
少しだけ止まる。
⸻
「……そっか」
⸻
無理に笑って、
小さく手を振る。
⸻
「またね」
⸻
そのまま歩いて行ってしまう。
⸻
海人は動けなかった。
⸻
(違う)
⸻
言いたかったのは、
そんなことじゃない。
⸻
(からかわれたくないだけなのに)
⸻
(茉白のためなのに)
⸻
でも、
伝えられなかった。
⸻
翌日。
⸻
教室。
⸻
茉白はいつも通り挨拶する。
⸻
「おはよう、海くん」
⸻
「……おう」
⸻
笑顔はある。
⸻
でも、
少しだけ距離ができていた。
⸻
その距離が、
海人には思っていた以上につらかった。
⸻
(……これじゃ意味ねぇじゃん)
⸻
守ろうとして選んだことが、
一番大切な人を、
少しだけ傷つけてしまっていた。
⸻
まだ二人は知らない。
⸻
「好きだからこそ、うまくいかない。」
そんな気持ちがあることを。




