つないだ手を思い出して
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新学期が始まって、一週間。
少しずつ新しい教室にも慣れてきた。
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この日は体育の授業。
校庭へ向かうため、みんなで廊下を歩いていた。
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「前の人について行きましょう」
先生の声に、子どもたちが並び始める。
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海人の隣には、茉白。
偶然だった。
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「海くん」
「ん?」
「今日、晴れてよかったね」
「だな」
何気ない会話。
去年までなら、それだけだった。
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歩きながら、ふと茉白の手が揺れる。
その横で、海人の手も揺れる。
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あと少し。
ほんの数センチ。
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指先が触れそうになった。
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「!」
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二人は同時に手を引っ込める。
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「……」
「……」
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何も言えない。
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海人の頭に浮かんだのは、去年の夏祭り。
人混みではぐれそうになった茉白の手を、とっさに握ったこと。
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(あの時は……)
必死だった。
守ることしか考えていなかった。
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でも今は違う。
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(なんでこんなに意識してんだよ……)
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隣を見ることもできない。
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一方、茉白も同じだった。
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(さっき……)
手が近づいた瞬間。
胸がドキッとした。
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自然に手をつないだ夏祭り。
海くんの手は温かかった。
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(なんで思い出すの……)
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顔が少し熱くなる。
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校庭に着く。
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先生が整列を指示する。
海人と茉白は少し離れた場所に並んだ。
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二人とも、どこかほっとしている。
でも同時に、
少しだけ寂しかった。
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体育が終わり、教室へ戻る帰り道。
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「海くん」
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茉白が小さく呼ぶ。
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「ん?」
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「さっき……」
そこまで言って止まる。
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「いや、なんでもない」
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照れ笑いを浮かべる。
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海人も笑った。
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「俺も」
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「え?」
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「なんでもねぇ」
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今度は海人が照れる番だった。
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二人は顔を見合わせる。
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少しだけ笑う。
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言葉にはしなかった。
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でも、お互いに分かっていた。
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去年の夏祭り。
初めてつないだ手。
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あの日は何とも思わなかった温もりが、
今では思い出すだけで胸が高鳴る。
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二人は少しずつ、
“手をつなぐ”ということの意味を、
意識し始めていた。




