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大事な宝物


次の日。


教室。


朝の日差しが窓から差し込んでいた。


茉白はランドセルを置くと、そっとポケットに手を入れる。


そこには昨日、海人が作ってくれたシロツメクサの指輪が入っていた。


少しだけ形は崩れ始めていたけれど、それでも大事に持ってきた。


「まだ大丈夫」


小さく笑って、机の中へしまう。



休み時間。


友達が茉白の机をのぞき込む。


「あれ?」


「なにそれ?」


茉白は少し慌てる。


「あっ……」


机の中から、シロツメクサの指輪が見えてしまっていた。


「かわいい!」


「誰が作ったの?」


「お花の指輪じゃん!」


女の子たちが集まってくる。


茉白は少し照れながら答えた。


「……海くん」


一瞬だけ静かになる。


「えっ!?」


「海人くんが!?」


「作ってくれたの?」


教室が少しだけざわついた。


「いいなぁ!」


「私もほしい!」


茉白は恥ずかしそうに笑いながら指輪を大事そうに両手で包む。


「これは……だめ」


「えー?」


「大事だから」


その言葉に、友達は顔を見合わせて笑った。


「茉白ちゃん、本当に大事なんだね」


茉白は照れながら、小さくうなずいた。



その様子を少し離れた席から海人が見ていた。


「海人!」


友達に呼ばれる。


「おう」


返事はする。


でも視線は、茉白の方へ向いていた。


女の子たちが指輪を見せてもらって笑っている。


(なんでそんな集まってんだ)


なんとなく落ち着かない。


その時、一人の男子が近づいてきた。


「俺にも見せて」


茉白は少し迷ったあと、指輪を見せる。


「へぇ、すげぇ」


男子が笑う。


海人はその様子を見て、眉をひそめた。


(そんな近くで見なくてもいいだろ)


自分でも理由は分からない。


ただ、なんだか面白くなかった。


友達が海人に聞く。


「どうした?」


「別に」


ぶっきらぼうに答える。


でも、気になって何度も茉白の方を見てしまう。



放課後。


帰り道。


海人が何気なく聞いた。


「……あの指輪」


茉白が顔を上げる。


「うん?」


「まだ持ってたんだ」


茉白は嬉しそうに笑う。


「もちろん」


「海くんが作ってくれたから」


そう言って、大事そうに指輪を見せる。


「壊れちゃうかもしれないけど、捨てないよ」


海人は少し照れくさそうに笑った。


「……そっか」


短い返事。


でも、その一言だけで十分だった。


さっきまで胸の中にあった、もやもやは少しだけ消えていた。


茉白が大事にしていたのは、


シロツメクサの指輪ではなく、


海人が作ってくれた”思い出”だった。

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