シロツメクサ
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放課後。
少し遠回りして、二人で歩く帰り道。
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「ねえ、こっち」
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茉白が先に進む。
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「どこ行くんだよ」
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「いいから」
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そのまま連れていかれた先——
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一面の草原。
白い花が、ぽつぽつと広がっている。
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「海くん、見て…‼︎」
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振り返る茉白。
目、きらきらしてる。
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「すごくない?」
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しゃがみこんで、
シロツメクサを指でつまむ。
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風が少し吹いて、
肩まで伸びた髪が揺れる。
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海人は少し遅れて、
その光景を見る。
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(……なんだこれ)
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花より、
茉白の方に目がいく。
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「……別に普通だろ」
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ぶっきらぼうに言う。
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「えー!」
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「かわいいじゃん」
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そう言って、
また花を摘む。
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「これでさ」
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「花冠、作れるんだよ」
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地面に座る茉白。
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「やったことないの?」
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「ねぇよ」
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「そっか」
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くすっと笑って、
編み始める。
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でも——
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「あれ」
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手が止まる。
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「……?」
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「綺麗に作れない…」
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少し眉を下げる。
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何回かやり直して、
でもうまくいかない。
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「なんでだろ」
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ぽつり。
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その横で、
海人は少しだけ見ていて——
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「……チッ」
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小さく舌打ち。
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「貸せ」
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「え」
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「いいから」
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手を出す。
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茉白は少しだけきょとんとして、
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「……ん」
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シロツメクサを渡す。
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海人、しゃがむ。
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少し不器用そうに見えて、
でも手は意外と迷わない。
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くるくると、
器用に編んでいく。
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「……」
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茉白、じっと見る。
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(できるんだ)
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少しだけ驚く。
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「ほら」
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差し出される。
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でも——
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「……あれ?」
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花冠じゃない。
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小さな輪。
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指に入るサイズ。
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「え?」
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思わず声が出る。
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「つけろ」
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ぶっきらぼう。
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「花冠でいいのに…」
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少しだけ困ったように言う。
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「……いいから」
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目を逸らしたまま。
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少しだけ間。
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茉白は、その指輪を受け取る。
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そっと、自分の指にはめる。
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ぴったり。
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「……」
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少しだけ見つめる。
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(……なんか)
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胸が、あったかくなる。
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顔を上げる。
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「……ありがとう、海くん」
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やわらかく笑う。
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海人、固まる。
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(……なんだそれ)
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また、心臓うるさい。
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「……別に」
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そっぽ向く。
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でも、
耳、赤い。
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風が吹く。
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白い花が、揺れる。
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花冠はできなかったけど。
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その代わりに残ったものは——
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少しだけ、
特別だった。
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