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園内での誕生日会




七月。


蝉の声が、朝から響いている。


保育園でも「暑いー!」と騒ぐ子どもたちが増えていた。


その日、教室の前には小さな飾りが置かれていた。


『おたんじょうび おめでとう』


先生が笑いながら言う。


「今日は、茉白ちゃんのお誕生日です!」


「おめでとー!」


ぱちぱちと拍手が起きる。


茉白は少し照れたようにしながら、「ありがとう」と笑った。


頭には、折り紙で作った小さな冠。


友達に「かわいい!」と言われて、困ったように笑う。



その少し後。


自由時間。


茉白は窓際に座って、もらった折り紙を眺めていた。


すると——


「それ、いいな」


横から声。


海人だった。


茉白は顔を上げる。


「……なに」


「その冠」


海人は興味ありそうに覗き込む。


「今日、誕生日なんだろ?」


「うん」


「ふーん」


海人は少し考えてから、


「いいな、ケーキ食えんじゃん」


と、すごく子どもっぽいことを言う。


茉白は思わず少し笑った。


「食べるよ」


「いいなー」


本気で羨ましそう。


その顔がおかしくて、茉白はまた小さく笑う。



少し沈黙。


でも今日は、不思議と気まずくない。


茉白はふと気になって、海人を見る。


「……海人は?」


「ん?」


「誕生日、いつ?」


海人は一瞬きょとんとしてから、


「11月」


と答える。


「へー」


「なんだよ」


「べつに」


でも、茉白は少しだけ覚えようとする。


“11月”。


なんとなく。


理由はまだ、自分でもわからない。



海人も、なんとなく茉白を見る。


今日はいつもより楽しそうに笑ってる。


友達に囲まれて、嬉しそうで。


(……よかったじゃん)


そんなことをぼんやり思う。



その時、向こうから友達が叫ぶ。


「海人ー!先生がアイスくれるって!」


「まじ!?」


一瞬で立ち上がる海人。


「じゃあな!」


走っていく後ろ姿。


茉白はそれを見ながら、


(ほんと、落ち着きない)


と思う。


でも——


少しだけ笑っていた。



まだ恋じゃない。


でも、


“誕生日を覚えた”。


それだけで、


相手が少しだけ特別な場所に近づいていく。

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