表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
56/150

夕立


夏休み。


約束していた日から、数日後。



朝から強い日差しが照りつけていた。



「今日も暑いね」



茉白が汗をぬぐう。



「夏だもんな!」



海人は元気よく笑った。



二人は公園で遊んでいた。



セミ取りをしたり、


鬼ごっこをしたり、


ベンチで休んだり。



笑い声が絶えない。



その時。



ゴロゴロ……



遠くで雷が鳴った。



「あれ?」



茉白が空を見上げる。



さっきまで青かった空に、


黒い雲が広がり始めていた。



「降るかな」



海人がつぶやく。



ポツ……



一滴。



ポツ、ポツ……



「雨!」



「あっ!」



次の瞬間。



ザーッ!!



大粒の雨が降り始めた。



「走れ!」



海人が言う。



「うん!」



二人は公園の東屋へ向かって走る。



「はぁ……」



屋根の下へ駆け込む。



びしょびしょではない。



でも、


肩や髪には小さな雨粒がついていた。



「急だったね」



茉白が笑う。



「びっくりした」



海人も笑い返す。



雨はどんどん強くなる。



ザーッ……



東屋には、


二人だけ。



雨音だけが静かに響いていた。



しばらく無言。



海人は外を見る。



(また雨か)



ふと、


学校の帰り道を思い出した。



雨の日。



茉白を車道側から引いたこと。



「危ねぇ」



あの日のことが頭に浮かぶ。



その時。



茉白も同じことを思い出していた。



(あの日も雨だった)



海くんが助けてくれた。



そして、


夏祭り。



人混みの中で、


手をつないだこと。



思い出した瞬間、


少しだけ頬が熱くなる。



「暑い?」



海人が不思議そうに聞く。



「え?」



「顔、赤い」



「ち、違う!」



茉白は慌てて首を振る。



「暑いだけ!」



海人は少し笑う。



「俺も暑い」



二人とも照れ笑い。



理由は、


お互い言わない。



でも、


同じことを思い出していた。



やがて雨が弱くなる。



「止みそうだ」



海人が空を見上げる。



雲の切れ間から、


青空が少しだけ見えた。



「帰ろうか」



「うん」



東屋を出る。



雨上がりの公園は、


土の匂いが広がっていた。



並んで歩く。



肩が少しだけ近い。



でも、


今日はどちらも離れなかった。



夏祭りの日とは違う。



手はつながない。



それでも。



隣にいるだけで、


安心できた。



夏の夕立は、


すぐに過ぎ去っていく。



けれど、


あの日手をつないだ思い出は、


二人の心の中で、


少しずつ特別なものになっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ