約束の日
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夏休み。
朝から青空が広がっていた。
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茉白は時計を見る。
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(もうすぐだ)
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今日は、
海くんと約束した日。
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「また遊ぼう」
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その約束を思い出すたび、
胸が少しだけ弾んだ。
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「行ってきます」
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元気よく家を出る。
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公園へ向かう道。
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(もう来てるかな)
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少しだけ足が速くなる。
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公園に着く。
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「あ……」
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誰もいない。
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(まだかな)
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ブランコに座って待つ。
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少しだけ不安になる。
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(約束、忘れてないよね)
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そんなことを考えた時。
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「茉白!」
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聞き慣れた声。
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振り向く。
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海人が走ってきた。
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「ごめん!」
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「待った?」
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息を切らしながら聞く。
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茉白は笑って首を振る。
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「今来たところ」
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本当は少しだけ待っていた。
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でも、
海くんが来てくれた。
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それだけで十分だった。
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「よかった」
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海人もほっと笑う。
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実は海人も、
家を出る前から少し落ち着かなかった。
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(茉白、来てるかな)
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(もし来てなかったらどうしよう)
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そんなことを考えながら走ってきた。
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二人とも、
同じ気持ちだった。
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「何して遊ぶ?」
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海人が聞く。
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「海くんは?」
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「鬼ごっこ!」
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「二人で?」
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茉白が笑う。
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「それも変か」
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海人もつられて笑った。
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「じゃあ……」
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二人で公園を歩く。
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セミの声。
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風に揺れる木。
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アリの行列を見つけてしゃがみ込んだり、
四つ葉のクローバーを探したり。
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特別なことは何もない。
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でも、
一緒にいるだけで楽しかった。
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しばらくして、
公園のベンチに座る。
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「海くん」
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「ん?」
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「約束、ちゃんと来てくれてありがとう」
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海人は少し照れる。
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「約束しただろ」
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当たり前のように言う。
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その言葉が、
茉白にはとても嬉しかった。
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「うん」
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小さく笑う。
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海人も笑い返した。
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夕方。
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帰る時間になる。
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「また遊ぼうな」
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海人が言う。
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「うん」
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茉白は嬉しそうに頷く。
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今度は、
偶然じゃない。
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“また遊ぼう”
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その約束が、
二人の毎日を少しだけ特別にしていた。
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夏の空には、
ゆっくりと白い雲が流れていた。
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