終業式の日
⸻
夏休み前、最後の日。
終業式。
⸻
朝から教室はいつも以上ににぎやかだった。
⸻
「今日で夏休みだ!」
「いっぱい遊ぶぞ!」
「宿題あるかなぁ」
⸻
あちこちから楽しそうな声が聞こえる。
⸻
海人も友達と笑っていた。
⸻
「海人!」
⸻
「夏休み、一緒に虫捕り行こうぜ!」
⸻
「いいな!」
⸻
元気よく返事をする。
⸻
でも。
⸻
ふと、
窓際へ目を向ける。
⸻
茉白。
⸻
友達と笑いながら話している。
⸻
(夏休みか)
⸻
少しだけ、
胸が静かになる。
⸻
終業式が始まる。
⸻
体育館。
⸻
校長先生の話。
⸻
海人は前を向いている。
⸻
でも、
少し離れた列にいる茉白が、
なんとなく気になってしまう。
⸻
(あとで話せるかな)
⸻
そんなことを考えていた。
⸻
教室へ戻る。
⸻
先生が一人ずつ通知表を渡していく。
⸻
「夏休みも元気に過ごしてくださいね」
⸻
「はーい!」
⸻
ランドセルを背負い、
帰る準備を始める。
⸻
教室には、
「またね!」
という声があふれていた。
⸻
海人も教室を出ようとした、その時。
⸻
「海くん」
⸻
後ろから、
優しい声。
⸻
振り返る。
⸻
茉白だった。
⸻
「夏休み、楽しんでね」
⸻
少し照れながら笑う。
⸻
海人も笑い返した。
⸻
「茉白も」
⸻
少しだけ間が空く。
⸻
どちらも、
もう一言話したい。
⸻
でも、
言葉が見つからない。
⸻
「じゃあ……」
⸻
「うん」
⸻
「また夏休み明け」
⸻
「またね」
⸻
二人は手を振る。
⸻
いつもなら、
「また明日」。
⸻
でも今日は違う。
⸻
「またね」
⸻
その言葉が、
少しだけ寂しかった。
⸻
校門を出て、
帰り道が分かれる。
⸻
海人は少し歩いて、
振り返る。
⸻
茉白も、
同じタイミングで振り返っていた。
⸻
目が合う。
⸻
少し笑って、
もう一度だけ手を振る。
⸻
今度こそ、
それぞれの帰り道へ歩き出した。
⸻
家に帰った海人は、
ランドセルを置いて窓の外を見る。
⸻
(明日、学校ないんだよな)
⸻
少しだけ静かな部屋。
⸻
その頃、
茉白も自分の部屋で、
通知表を机に置いていた。
⸻
(海くん、今ごろ何してるかな)
⸻
ふと考えて、
少し照れ笑いをする。
⸻
夏休みは楽しみ。
⸻
でも、
毎日会えていた人に会えなくなることが、
こんなに寂しいなんて、
二人ともまだ知らなかった。
⸻
青い空には、
大きな入道雲が浮かんでいた。
⸻




