もうすぐ夏休み
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7月も終わりに近づいた。
教室の窓からは、
蝉の鳴き声が聞こえてくる。
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先生が黒板に大きく書く。
「もうすぐ夏休み」
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「来週はいよいよ終業式です」
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「やったー!」
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教室中が歓声に包まれる。
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「海行く!」
「おばあちゃん家行く!」
「花火する!」
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みんな嬉しそうに話し始める。
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海人も友達に囲まれていた。
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「海人は?」
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「いっぱい遊ぶ!」
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「いいなー!」
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笑い声が広がる。
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その時。
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(……夏休み)
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ふと、
海人の笑顔が少しだけ止まる。
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(毎日、学校来ないんだよな)
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何気なく、
窓際を見る。
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茉白も友達と話していた。
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「茉白ちゃんは?」
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「おじいちゃんとおばあちゃんのお家に行くよ」
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「楽しそう!」
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「うん」
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茉白は笑って答える。
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でも。
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(夏休みか)
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頭に浮かんだのは、
海くんだった。
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毎日教室で会って、
「おはよう」って言って。
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休み時間に目が合って。
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帰る時に、
「また明日ね」
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それが当たり前になっていた。
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(会えないんだ)
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そう思うと、
胸の奥が少しだけ寂しくなった。
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昼休み。
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海人は校庭へ出る。
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友達と遊んでいる途中、
何気なく校舎を見る。
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二階の窓。
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茉白が立っていた。
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目が合う。
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海人は小さく手を振る。
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茉白も、
少し照れながら手を振り返した。
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それだけで、
二人とも少し笑った。
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放課後。
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ランドセルを背負い、
昇降口へ向かう。
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偶然、
海人と茉白が並んで歩く。
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「海くん」
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「ん?」
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「夏休み、楽しみ?」
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少し考えて、
海人は笑う。
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「楽しみ」
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そして、
少しだけ照れながら続けた。
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「……でも」
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「?」
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「学校も、悪くない」
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茉白は少し驚く。
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海くんが、
そんなことを言うなんて思わなかった。
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「わたしも」
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小さく笑う。
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「学校、好き」
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その言葉を聞いて、
海人も笑った。
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校門で、
帰り道が分かれる。
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「また明日」
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「うん」
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短い言葉。
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でも、
二人とも心のどこかで思っていた。
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(“また明日”も、あと少しなんだ)
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夏休みまで、
あと数日。
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当たり前だった毎日が、
少しだけ特別に感じ始めていた。
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