七夕の願い
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7月。
教室の窓から、夏の風が吹き込む。
廊下には、大きな笹が飾られていた。
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先生が笑顔で言う。
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「今日は七夕です。」
「みんな、願い事を書きましょう。」
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色とりどりの短冊が配られる。
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「何を書こうかなー!」
「サッカー選手!」
「ケーキいっぱい食べたい!」
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教室は楽しそうな声でいっぱいだった。
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海人は短冊を見つめる。
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(願い事か……)
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鉛筆を持つ。
でも、なかなか書けない。
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ふと、
窓際を見る。
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茉白も短冊を見つめたまま、
少し考えていた。
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(茉白、何書くんだろ)
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少しだけ気になる。
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でも、
見ちゃだめだと思って目を逸らす。
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一方、茉白。
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(お願いごと……)
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何を書こう。
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健康。
勉強。
家族。
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いろいろ考える。
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でも、
ふと頭に浮かぶのは、
海くんの笑顔だった。
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(……なんで)
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自分でも少し照れてしまう。
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(書けないよ)
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「茉白ちゃん、書けた?」
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友達がのぞき込もうとする。
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「あっ、まだ!」
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慌てて短冊を隠す。
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友達は笑った。
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「秘密なんだ!」
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「……うん」
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少し照れながら笑う。
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しばらくして、
みんなが短冊を笹に結び始める。
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海人も結びに行く。
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その時、
隣に茉白が来た。
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「海くん」
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「ん?」
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「高いところ、届く?」
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「届くよ」
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海人は背伸びをして、
茉白の短冊も一緒に結んであげる。
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「はい」
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「ありがとう」
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少しだけ目が合う。
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また二人とも照れて笑う。
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「海くんの願い事、叶うといいね」
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茉白が言う。
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海人も笑って頷いた。
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「茉白もな」
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二人とも、
お互いの短冊は見なかった。
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見たかった。
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でも、
見ない方がいい気がした。
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放課後。
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教室には、
色とりどりの短冊が風に揺れていた。
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海人は帰り際、
もう一度だけ笹を見る。
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(叶うかな)
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小さく笑う。
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茉白も同じように振り返る。
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(叶うといいな)
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二人の願い事は、
誰にも知らない秘密。
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でも、
その願いの中には、
お互いを思う優しい気持ちが、
ほんの少しだけ込められていた。
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夏の空を見上げる笹が、
静かに風に揺れていた。
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