がんばれ!
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運動会当日。
朝から校庭はにぎやかだった。
赤組、白組に分かれた子どもたちが、それぞれ並んでいる。
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「今日は運動会です!」
先生の声に、
「はい!」
と元気な返事が返ってきた。
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海人は赤組。
茉白は白組。
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「今日はライバルだね」
同じ班の女の子が笑う。
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「負けないよ」
茉白も小さく笑った。
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でも。
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(海くん、リレー走るんだ)
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そのことが少しだけ気になっていた。
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競技が進んでいく。
玉入れ。
綱引き。
かけっこ。
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海人は全力で走り、
茉白も一生懸命応援していた。
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そして最後。
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「一年生代表リレーです!」
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校庭が少しざわつく。
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海人がスタート位置へ向かう。
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(海くん)
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茉白は自然と海人を目で追っていた。
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「位置について」
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ピッ!
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スタート。
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海人は勢いよく飛び出す。
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「速い!」
「海人くん、がんばれ!」
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応援が響く。
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海人は先頭を走る。
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でも。
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カーブで少しだけ足がもつれる。
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「あっ!」
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会場から小さな声が上がる。
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海人は踏ん張る。
転ばない。
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その瞬間。
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「海くん!」
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思わず声が出た。
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「がんばれー!」
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茉白だった。
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自分でも驚くくらい大きな声。
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海人の耳にも、その声は届いた。
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(茉白……)
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胸が熱くなる。
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「おおおっ!」
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もう一度踏み込む。
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最後まで全力で走り切り、
バトンをつないだ。
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「ナイス!」
先生が拍手する。
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競技が終わる。
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海人は息を切らしながら歩いていた。
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そこへ、
茉白が近づいてくる。
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「海くん」
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「ん?」
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「さっき、大丈夫だった?」
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海人は少し笑う。
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「転びそうになっただけ」
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「びっくりした」
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その一言に、
海人は少し照れた。
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「心配した?」
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何気なく聞く。
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茉白は少し考えて、
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「……うん」
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素直に頷いた。
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「ケガしたら痛いでしょ」
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海人は少し笑う。
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「平気だよ」
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「でも気をつけて」
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「おう」
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短いやり取り。
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でも。
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海人の胸には、
その「心配した」の一言が残った。
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一方の茉白も、
海人が転ばなくてよかったと、
心の底から思っていた。
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理由はまだ分からない。
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でも。
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海くんが笑っていると、
安心する。
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その気持ちは、
少しずつ大きくなっていた。
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