はじめての遠足
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春も終わりに近づいた頃。
先生が教室で笑顔を見せる。
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「来週は遠足です!」
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「やったー!」
教室が一気に賑やかになる。
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「おやつ持ってきていい?」
「お弁当楽しみ!」
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海人も友達と盛り上がっていた。
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でも。
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(茉白は)
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自然と視線が動く。
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茉白は友達と小さく笑いながら話していた。
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(楽しそうだな)
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その笑顔を見ると、
海人も少し嬉しくなる。
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遠足当日
空は快晴。
子どもたちはランドセルではなく、小さなリュックを背負って集まっていた。
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「出発するよー!」
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みんなで歩き始める。
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先生が列を作る。
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「二人ずつ並んでね」
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海人は友達と並ぶ。
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茉白も友達と並ぶ。
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少し離れた列。
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(遠い)
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海人は少しだけ残念そうな顔をする。
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目的地に着くと、
先生が言った。
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「今から自由時間です!」
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「やったー!」
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みんな一斉に走り出す。
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海人も友達に誘われる。
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「海人!鬼ごっこ!」
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「おう!」
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走り出そうとした、その時。
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「あっ……」
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小さな声。
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見ると、
茉白が転びそうになっていた。
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木の根につまずいたらしい。
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海人は考えるより先に動いた。
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「茉白!」
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腕をつかむ。
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転ぶ寸前で体を支える。
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「大丈夫か?」
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「……うん」
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茉白は少し驚いた顔をしていた。
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「ありがとう」
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海人は少し照れて、
頭をかく。
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「別に」
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またぶっきらぼう。
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その様子を見ていた友達が笑う。
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「海人、優しいじゃん!」
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「ち、違うし!」
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慌てて否定する。
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茉白はそのやり取りを見て、
少しだけ笑った。
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(海くんらしい)
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そう思う。
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その日の帰り道。
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茉白は今日のことを思い出していた。
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(また助けてもらった)
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保育園の頃も。
小学校に入ってからも。
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困った時。
危ない時。
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気づくと、
海くんが近くにいる。
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(なんでだろ)
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胸が少しだけあたたかくなる。
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一方、海人。
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(また勝手に動いた)
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守ろうなんて考えていなかった。
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体が先に動いていた。
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(……まあ、いいか)
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茉白が笑っていた。
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それだけで、
今日の遠足は楽しかった。
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夕焼けに染まる帰り道。
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二人は少し離れて歩いていた。
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でも。
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心の距離は、
昨日よりほんの少しだけ近づいていた。
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