となりが気になる
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4月も終わりに近づいた頃。
新しい教室にも、少しずつ慣れてきた。
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休み時間。
先生が教室に入ってくる。
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「今日は席替えをします」
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「やったー!」
「えー!」
教室が一気に賑やかになる。
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海人も友達と笑っていた。
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でも。
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(茉白は……)
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気づけば探している。
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茉白も少しだけ驚いた顔をしていた。
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先生がくじを配る。
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「引いた番号の席に座ってね」
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子どもたちが一斉に動き始める。
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海人は自分の番号を見る。
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「えっと……」
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席へ向かう。
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(近い)
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今までより、
茉白の席に少しだけ近くなった。
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隣ではない。
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でも、
二列ほどしか離れていない。
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「ここか」
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椅子に座る。
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何気なく前を見る。
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ちょうど茉白も席に座ったところだった。
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目が合う。
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「あ」
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茉白が小さく笑う。
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「近くなったね」
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自然な一言。
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海人は少し照れて、
頭をかく。
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「……そうだな」
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それだけなのに、
なんだか少し嬉しかった。
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授業が始まる。
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先生が黒板に文字を書く。
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海人は前を向いている。
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でも。
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ふと視線が動く。
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茉白。
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真剣にノートを書いている。
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(ちゃんとやってる)
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当たり前のことなのに、
つい見てしまう。
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その時。
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茉白が顔を上げる。
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また目が合う。
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海人は慌てて黒板を見る。
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(また見てた)
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一人で恥ずかしくなる。
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一方。
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茉白も少しだけ笑っていた。
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(また見てた)
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最近、
海くんとよく目が合う。
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偶然なのか。
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それとも。
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少しだけ気になる。
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でも、
まだ聞けない。
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放課後。
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ランドセルを背負う。
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海人が教室を出ようとすると、
後ろから声がした。
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「海くん」
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振り向く。
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「忘れ物」
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茉白が鉛筆を差し出していた。
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「あ」
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海人は自分の机を見る。
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本当に忘れていた。
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「ありがと」
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「どういたしまして」
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それだけ言って、
茉白は笑う。
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海人もつられて笑った。
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教室を出る二人。
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並んで歩くわけじゃない。
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少しだけ距離を空けて歩く。
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でも。
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その距離が、
今の二人にはちょうどよかった。
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近すぎず。
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遠すぎず。
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少しずつ、
少しずつ。
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二人の毎日は、
昨日よりほんの少しだけ、
特別になっていく。




