探してしまう
⸻
ある日の朝。
教室には、子どもたちの元気な声が響いていた。
「おはよう!」
「昨日テレビ見た?」
「見たー!」
⸻
海人はランドセルを置くと、
何気なく教室を見渡す。
⸻
(……あれ)
⸻
窓側の席。
誰もいない。
⸻
(茉白は?)
⸻
まだ来ていない。
⸻
「海人!」
友達に呼ばれる。
「サッカーしよう!」
⸻
「ああ、いいよ」
⸻
返事をする。
でも。
どこか落ち着かない。
⸻
教室の扉が開くたび、
ついそっちを見てしまう。
⸻
(まだか)
⸻
何度目かに扉が開いた。
⸻
「おはようございます」
⸻
茉白だった。
⸻
海人は小さく息をつく。
⸻
(来た)
⸻
それだけなのに、
胸の奥がほっとした。
⸻
「海くん」
⸻
茉白が海人に気づく。
小さく笑って手を振る。
⸻
「お、おう」
⸻
海人も照れくさそうに手を振り返した。
⸻
その様子を見ていた友達が笑う。
⸻
「海人、今ちょっと嬉しそうだった!」
⸻
「は!?」
⸻
「違うし!」
⸻
慌てて否定する。
⸻
でも耳は赤かった。
⸻
一方、その日の昼休み。
⸻
茉白は図書室で本を借りていた。
⸻
教室へ戻る途中、
ふと校庭を見る。
⸻
(……海くん)
⸻
いない。
⸻
鬼ごっこをしている子はいる。
ブランコにも何人かいる。
⸻
でも、
海人の姿が見えなかった。
⸻
(どこ行ったんだろ)
⸻
気づけば、
校庭を見回している。
⸻
「あ」
⸻
体育館の近く。
⸻
友達と笑いながら走っていた。
⸻
(いた)
⸻
それだけで、
なんとなく安心する。
⸻
「茉白ちゃん?」
⸻
隣の友達が不思議そうに聞く。
⸻
「どうしたの?」
⸻
「……ううん」
⸻
茉白は少し笑う。
⸻
「なんでもない」
⸻
でも心の中では思っていた。
⸻
(なんで探しちゃうんだろ)
⸻
理由はまだ分からない。
⸻
放課後。
⸻
先生が帰りの挨拶を終える。
⸻
「気をつけて帰ってね」
⸻
「はーい!」
⸻
みんながランドセルを背負って立ち上がる。
⸻
海人も立ち上がった、その時。
⸻
「海くん」
⸻
聞き慣れた声。
⸻
振り向く。
⸻
茉白が立っていた。
⸻
「一緒に帰る?」
⸻
海人は少しだけ目を丸くする。
⸻
「……いいよ」
⸻
嬉しい。
でも照れくさい。
⸻
そんな気持ちを隠しながら、
二人は校門へ向かって歩き出した。
⸻
まだ恋とは呼べない。
⸻
でも、
会えないと少し寂しい。
見つけると少し安心する。
⸻
そんな小さな気持ちが、
二人の中で少しずつ育ち始めていた。




