なんか、おもしろくない
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昼休み。
校庭には子どもたちの元気な声が響いていた。
「海人くん!」
同じ班の女の子が駆け寄る。
「一緒にブランコ行こう!」
「いいよ!」
海人はいつものように笑って答える。
そのまま女の子たちとブランコへ向かっていった。
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少し離れた場所。
茉白は友達と花を見つけて遊んでいた。
ふと視線を上げる。
海くんが笑っている。
隣には女の子。
何か話して、二人とも楽しそうだった。
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(……楽しそう)
それだけ。
そう思ったはずなのに。
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胸の奥が、少しだけもやっとした。
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「茉白ちゃん?」
友達が不思議そうに顔をのぞき込む。
「どうしたの?」
「え?」
「ぼーっとしてる」
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「……なんでもない」
そう答えて笑う。
でも。
もう一度だけ、
海くんの方を見てしまった。
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(なんか、おもしろくない)
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その気持ちの理由は、
まだ分からなかった。
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その頃。
海人はブランコから降りて歩いていた。
すると。
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「海くん!」
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聞き慣れた声。
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振り向く。
茉白だった。
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でも。
その隣には、
同じ班の男の子がいた。
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「さっき教えてくれてありがとう!」
男の子が笑う。
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「ううん」
茉白も笑い返す。
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その様子を見た瞬間。
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(……え)
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海人の足が止まる。
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(なんであいつと話してんだ)
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別に普通の会話。
仲良く話しているだけ。
それなのに。
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胸がざわざわする。
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「海人!」
友達に肩を叩かれる。
「鬼ごっこやろう!」
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「あ……うん」
返事はした。
でも。
頭の中はさっきの光景でいっぱいだった。
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(なんか嫌だ)
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理由は分からない。
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でも。
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他の男子に笑う茉白を見て、
少しだけ胸が痛かった。
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帰り道。
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校門の前で、
茉白が海人を見つける。
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「海くん、一緒に帰る?」
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海人は一瞬だけ黙る。
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さっきまでのもやもやが、
少しだけ残っていた。
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「……いいよ」
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二人で歩き出す。
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少し沈黙。
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茉白は海人を見上げる。
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「海くん、今日静かだね」
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「そうか?」
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「うん」
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少しだけ考えてから、
茉白は笑った。
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「疲れた?」
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「……たぶん」
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本当は違う。
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疲れたんじゃない。
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少しだけ、
やきもちを妬いていただけ。
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でも、
そんな気持ちを、
小学一年生の海人はまだ言葉にできなかった。
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そして茉白も。
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今日一日、
海人が他の女の子と笑っていたことを、
帰るまで何度も思い出していた。
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(……なんだったんだろ)
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胸に残った小さなもやもや。
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二人ともまだ、
それが”やきもち”だとは知らない。




