なんか、もやもや
⸻
昼休み。
校庭には元気な声が響いていた。
「海人くん!」
女の子が海人のところへ駆け寄る。
「鬼ごっこ、一緒にやろ!」
「いいよ!」
海人はいつも通り笑って返事をする。
すぐに何人か集まってきて、鬼ごっこが始まった。
⸻
少し離れた場所。
茉白は友達と縄跳びをしていた。
ふと視線を上げる。
(……海くん)
楽しそうに笑っている。
その隣には、同じ班の女の子。
何か話して、二人で笑っていた。
⸻
(楽しそう)
そう思う。
でも。
胸の奥が少しだけ落ち着かない。
⸻
「茉白ちゃん?」
友達に呼ばれて、はっとする。
「どうしたの?」
「……なんでもない」
そう答える。
でも、もう一度だけ海人の方を見てしまう。
(なんなんだろ)
分からない。
理由はないはずなのに、
少しだけ胸がもやもやした。
⸻
放課後前。
今度は教室。
茉白は班の男の子に話しかけられていた。
「この絵、上手だね!」
「ほんと?」
「うん!」
二人で作品を見ながら笑っている。
⸻
その光景が、
海人の目に入った。
(……え)
足が止まる。
⸻
男の子と楽しそうに話す茉白。
笑っている。
さっきまで自分に向けていた笑顔とは違う。
(……なんだよ)
胸がざわっとした。
⸻
「海人!」
友達が呼ぶ。
「帰ろう!」
「あ、ああ」
返事はした。
でも視線は動かない。
(あいつ、あんな笑うんだ)
知っているはずなのに。
他の男子と話しているのを見ると、
なんだか落ち着かない。
⸻
(……なんでこんな気になるんだ)
自分でも分からない。
頭の中がぐちゃぐちゃになる。
⸻
その時。
茉白が海人に気づく。
「あ、海くん」
いつものように笑って手を振る。
その笑顔を見た瞬間、
海人の胸のつかえが少しだけ消えた。
「……おう」
ぶっきらぼうに返事をする。
でも、さっきまでのもやもやは少し薄れていた。
⸻
茉白もまた、
(海くん、なんか変だった)
と思いながら歩き出す。
海人は海人で、
(俺、何バグってんだよ……)
と頭を抱えていた。
二人ともまだ、
この気持ちが「やきもち」だとは気づいていなかった。




