別々の班
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入学式が終わり、
子どもたちは少しずつ新しい教室に慣れ始めていた。
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先生が黒板に大きく文字を書く。
「班を決めます」
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「今日から、この班で給食やお掃除をします」
「席も班ごとに並びますよ」
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教室が少しざわつく。
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「海人!」
隣の男の子が笑う。
「同じ班になれるかな?」
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「なれたらいいな!」
海人も笑って答える。
でも。
(茉白は……)
気づけば、そっちを見ていた。
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茉白は静かに先生の話を聞いている。
まだ海人には気づいていない。
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先生が名前を呼び始めた。
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「一班」
「○○さん」
「△△さん」
「海人くん」
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「はい!」
元気よく返事をする。
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(茉白は……?)
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まだ呼ばれない。
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「二班」
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やっぱり呼ばれない。
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海人は少しだけ落ち着かなくなる。
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そして。
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「三班」
「茉白ちゃん」
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「はい」
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茉白が立ち上がる。
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(別か……)
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海人は少しだけ肩を落とした。
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(まあ、仕方ないよな)
そう思う。
でも、
ほんの少しだけ残念だった。
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茉白も新しい班の席へ向かう。
その途中、
海人と目が合った。
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海人は小さく笑う。
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茉白も笑い返した。
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それだけで、
少しだけ安心した。
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給食の時間。
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「いただきます!」
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班ごとに机を合わせる。
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海人は新しい班の友達と楽しそうに話している。
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でも、
時々視線が動く。
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三班。
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茉白も友達と話していた。
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笑っている。
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(楽しそう)
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その姿を見ると、
海人もなんとなく嬉しくなる。
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一方、
茉白も海人を見つけていた。
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(楽しそう)
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友達と笑う海人は、
保育園の頃と変わらない。
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でも。
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(ちょっと遠い)
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班が違うだけ。
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それだけなのに、
話しかける機会が減った気がした。
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昼休み。
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「茉白ちゃん!」
班の女の子が声をかける。
「一緒に鬼ごっこしよう!」
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「うん」
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返事をして立ち上がる。
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その時、
遠くから海人の声が聞こえた。
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「おーい!」
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海人も別の班の友達に呼ばれている。
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一瞬だけ目が合う。
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「あとでね」
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茉白が小さく口を動かす。
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海人も気づいて、
軽く頷いた。
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言葉は交わさない。
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でも、
“あとで”
その約束だけで、
二人は少しだけ笑った。
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同じ教室。
同じ毎日。
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それでも、
班が違うだけで、
少しだけ遠くなった距離。
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けれど、
その距離を埋めるように、
二人は自然とお互いを探すようになっていた。




