表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
28/150

保育園最後の外遊び


3月。


空はよく晴れていた。


少し冷たい風の中にも、春の匂いが混ざっている。



「今日はたくさん外で遊びましょう!」


先生の声に、


子どもたちは一斉に歓声を上げた。



「やったー!」


「鬼ごっこする!」


「ブランコ空いてる!」



みんな一斉に園庭へ飛び出していく。



海人も走り出そうとして、


ふと足を止めた。



(最後かもな)



いつも遊んでいる園庭。


砂場。


ブランコ。


滑り台。



小さい頃からずっと遊んできた場所。



そんなことを考えるなんて、


少し前の海人ならありえなかった。



「海くん!」



声がした。



振り向く。



茉白だった。



海人の心臓が跳ねる。



まだ慣れない。



「な、なに」



「先生が呼んでる」



「あ」



どうやら話を聞いていなかったらしい。



茉白は少し笑う。



「ちゃんと聞いてなかったでしょ」



「聞いてたし」



「うそ」



即答。



海人は少しむくれる。



そのやり取りが、


最近は当たり前になっていた。




しばらくして。



鬼ごっこが始まった。



「海人鬼ー!」



「なんでだよ!」



みんなが笑う。



海人も笑いながら走り出した。



でも。



視界の端に、


茉白がいる。



友達と一緒に走っている。



楽しそうに笑っている。



その姿を見ると、


なんだか嬉しかった。




鬼ごっこの後。



少し疲れて、


二人ともブランコの近くに座る。



珍しく、


周りに誰もいなかった。



風が吹く。



静かな時間。



「もう卒園だね」



ぽつりと茉白が言った。



海人は少し驚く。



茉白からそういう話をするのは珍しかった。



「そうだな」



短く返す。



茉白は空を見上げる。



「なんか変な感じ」



「なにが?」



「ずっとここにいたから」



海人も園庭を見る。



砂場。


滑り台。


ブランコ。



どれも見慣れた景色だった。



「たしかに」



珍しく意見が一致する。



茉白は少し笑った。



海人もつられて笑う。




帰る時間。



先生が子どもたちを呼ぶ。



「みんなー!そろそろお部屋入るよー!」



「はーい!」



子どもたちが走り出す。



海人も立ち上がる。



その時。



「海くん」



呼ばれる。



振り返る。



茉白がいた。



「ん?」



「また明日ね」



当たり前みたいな一言。



でも。



海人の顔が少し赤くなる。



「お、おう」



それだけ返す。



茉白は気づいていない。



でも海人は、


その「また明日ね」が、


なんだかすごく嬉しかった。



卒園まで、


あと少し。



二人の保育園生活も、


ゆっくり終わりへ近づいていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ