表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
26/150

初めての呼び方


教室の空気はいつもと変わらない。


みんな遊んでいるし、


先生も何か準備をしている。


なのに——


海人だけは全然いつも通りじゃなかった。



(海くん……?)


頭の中でぐるぐるする。



(なんで急に)



さっきの言葉が離れない。



「海人ー!」


友達に呼ばれる。



「お、おう」


返事をする。


でも遅い。



「どうした?」


「なんでもねぇ」



なんでもなくない。


むしろ大変だった。



海人はちらっと茉白を見る。



茉白は窓際に戻っていた。


もう普通の顔。


さっきのことなんて気にしていないみたいに。



(俺だけかよ)



なんか悔しい。



その時。


先生が手を叩く。



「みんなー!お片付けするよー!」



「はーい!」



子どもたちが一斉に動き出す。



茉白も席を立つ。



高い棚の上にある箱を取ろうとして、


少し背伸びする。



届かない。



「ん……」



もう少し。



その時。


横から手が伸びる。



「ほら」



海人だった。



箱を取って、そのまま渡す。



「……ありがとう」



茉白が受け取る。



少しだけ目が合う。



海人は慌てて目を逸らした。



「別に」



ぶっきらぼう。



茉白はその反応を見て、


少しだけ首をかしげる。



(また変)



最近ずっとそう。



話しかけてくるのに、


目を合わせない。



近くに来るのに、


すぐ離れる。



意味が分からない。



でも。



「海くん」



無意識だった。



呼んでから気づく。



海人がぴたりと止まる。



「な、なんだよ」



また顔が赤い。



茉白は不思議そうに見る。



「箱、重くない?」



本当に聞きたかっただけ。



海人は数秒黙って、



「全然」



と答える。



そのまま箱を運んでいく。



でも耳は真っ赤だった。



茉白はその背中を見送る。



(やっぱり変)



そう思うのに。



気づくと少し笑っていた。



海人も気づいていない。


茉白もまだ気づいていない。



でも、


海人の片思いだけだったはずの距離は、


ほんの少しだけ、


近づき始めていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ