変わる心
⸻
2月。
朝から冷たい風が吹いていた。
保育園の庭には、少しだけ残った雪がある。
子どもたちは登園するなり大騒ぎだった。
⸻
「雪まだある!」
「ほんとだ!」
「遊ぼうぜ!」
⸻
海人も真っ先に外へ飛び出していく。
相変わらず元気だった。
⸻
その様子を、
茉白は教室の窓から見ていた。
⸻
(寒くないのかな)
⸻
毎年思う。
でも海人は全然気にしていない。
⸻
すると先生が言った。
⸻
「今日は雪で遊んでもいいですよー」
⸻
「やったー!」
⸻
一斉に園庭へ向かう子どもたち。
⸻
茉白も友達に手を引かれて外へ出る。
⸻
園庭では、
海人がすでに雪を集めていた。
⸻
「でっかいの作るぞ!」
⸻
友達と一緒に雪玉を転がしている。
⸻
でも雪は少ない。
すぐ崩れる。
⸻
「なんでだよー!」
⸻
海人が不満そうに叫ぶ。
⸻
その様子を見て、
茉白は少しだけ笑った。
⸻
「また失敗してる」
⸻
隣の友達も笑う。
⸻
「海人くんって面白いよね」
⸻
「うん」
⸻
自然に頷く。
⸻
その時だった。
⸻
「茉白!」
⸻
突然名前を呼ばれる。
⸻
見ると海人。
⸻
なぜか雪玉を持っている。
⸻
「なに?」
⸻
「手貸せ」
⸻
「え?」
⸻
意味が分からない。
⸻
でも海人は待たない。
⸻
茉白の手を取る。
⸻
冷たい。
⸻
「うわっ!」
⸻
思わず声が出る。
⸻
その手の中に、
小さな雪玉が乗せられる。
⸻
「できた」
⸻
満足そうな海人。
⸻
茉白はぽかんとする。
⸻
「なにこれ」
⸻
「雪だるま」
⸻
見る。
⸻
たしかに。
小さい。
ものすごく小さい。
⸻
指の先くらいしかない。
⸻
「ちっちゃ」
⸻
思わず言う。
⸻
海人が笑う。
⸻
「お前にやる」
⸻
「いらない」
⸻
即答。
⸻
でも捨てない。
⸻
海人はそれを見て、
なんだか嬉しくなる。
⸻
⸻
少しして。
⸻
雪玉は溶けてしまった。
⸻
でも。
⸻
茉白は気づいていた。
⸻
雪玉が欲しかったわけじゃない。
⸻
海人はただ、
自分のところへ来たかったんだと。
⸻
理由は分からない。
⸻
でも、
なんとなくそう思った。
⸻
そして。
⸻
そのことを考えている自分に、
少しだけ首をかしげる。
⸻
(なんで気になるんだろ)
⸻
答えはまだ出ない。
⸻
けれど。
⸻
2月の冷たい風の中で、
茉白の心も少しずつ変わり始めていた。
⸻




