茉白の違和感
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午後の自由時間。
教室の中は、いつもみたいにざわざわしている。
茉白は机に頬杖をついて、ぼーっとしていた。
特にやることもなくて、
なんとなく周りを見てるだけ。
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ふと。
視線が合う。
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海人。
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一瞬だけ、目が合って——
すぐ逸らされる。
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(……また)
小さく思う。
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前から、ちょっと変だとは思ってた。
でも最近——
(なんか増えてる)
見る回数。
逸らす速さ。
変なタイミング。
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(なにあれ)
首をかしげる。
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別に嫌じゃない。
でも、
意味が分からない。
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少しして。
茉白は席を立つ。
水を飲みに行こうとして、
教室の真ん中を通る。
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その時。
「……あ」
小さな声。
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見ると、
海人が少し焦った顔で立っていた。
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「なに」
普通に聞く。
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「……いや」
言葉に詰まる海人。
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一瞬の沈黙。
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(まただ)
茉白は思う。
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「なにかあるなら言えばいいじゃん」
あっさり。
責める感じじゃない。
ただの疑問。
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「……別にねぇし」
目を合わせない。
ちょっと不機嫌っぽい言い方。
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(なんなの)
また思う。
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でもその時。
別の子がぶつかりそうになる。
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「おっと」
海人が先に動く。
茉白の腕を軽く引く。
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ぶつからずに済む。
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「……」
一瞬の距離。
近い。
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「気をつけろよ」
ぶっきらぼう。
でも、さっきとは違う声。
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すぐに手を離す。
そしてまた、目を逸らす。
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「……ありがと」
茉白は普通に言う。
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でも。
少しだけ、間があった。
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(今のなに)
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さっきまでの“変”とは違う。
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避けてるのに、
近づいてくる感じ。
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冷たいのに、
たまにだけ、優しい。
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(意味わかんない)
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水を飲みながら、
ぼんやり考える。
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(でも)
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嫌じゃない。
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むしろ、
少しだけ気になる。
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でもそれはまだ、
名前のつかない感覚。
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「変なやつ」
小さく呟く。
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でもその言葉の中に、
ほんの少しだけ、
前よりやわらかい何かが混ざっていた。
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