視線の先
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次の日。
朝、教室に入った瞬間。
(……いる)
視界の端で、もう分かる。
窓際。
茉白。
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(……見んな)
心の中で言う。
でも——
一瞬、目がいく。
すぐ逸らす。
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(もう見ねぇ)
決める。
理由は分からないけど、
このままだと変になる気がした。
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「海人ー!」
「おー!」
友達の方に行く。
今日はちゃんと遊ぶ。
ちゃんといつも通り。
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外遊び。
走る。
笑う。
大声出す。
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(よし、見てねぇ)
自分で思う。
いい感じ。
普通。
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——のはずなのに。
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ふとした瞬間。
視界に入る。
白っぽい髪。
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(……あ)
反射で目が向く。
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木の近く。
また一人でいる。
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(いや、見んなって)
すぐ逸らす。
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(なんでだよ)
イラつく。
自分に。
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「海人!こっち!」
「あ、今行く!」
走る。
でも——
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また、見る。
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(……なんで)
何回も。
何回も。
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避けようとするほど、
逆に気になる。
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遊びが終わる頃には、
もうぐちゃぐちゃだった。
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(意味わかんねぇ)
息を整えながら、
その場に座る。
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視線が、また動く。
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(……見んな)
思ってるのに、
もう止まらない。
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茉白が立ち上がる。
歩き出す。
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(どこ行くんだよ)
無意識に追う。
目で。
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(……は?)
その瞬間。
自分で気づく。
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(なんで追ってんだよ)
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ドクン、と心臓が鳴る。
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頭の中で、
昨日までのことが一気に繋がる。
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気づいたら見てる
話しかけた
変になる
うまくいかない
でも——
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(……嫌じゃねぇ)
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むしろ、
見えないと気になる
いないと探す
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(……あ)
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静かに、落ちる。
理解が、ストンと。
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(俺……)
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視線の先。
茉白の背中。
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(あいつのこと、)
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言葉になる。
初めて。
逃げ場なしに。
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(好きなのかよ)
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一気に顔が熱くなる。
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「は!?」
思わず声が出る。
近くのやつが「どうした?」って見る。
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「……なんでもねぇ」
そっぽ向く。
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心臓、うるさい。
頭、真っ白。
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(マジかよ……)
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もう戻れない。
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さっきまでの“なんとなく”が、
全部意味を持ってしまった。
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(最悪だ……)
そう思うのに、
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視線は、また——
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茉白を探してる。
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止められない。
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