影
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昼休み。
外ではしゃぐ声が響く中、
海人はいつも通り走っていた。
「捕まえた!」
「うわー!」
笑い声。
でも——
(……あ)
また、目がいく。
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少し離れた木の下。
茉白が座って、本を見ている。
周りに人はいるけど、
誰とも話していない。
静かに、自分の時間を過ごしてる。
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(……まただ)
気づくと見てる。
理由は分からない。
でも——
見つけると、目が離れない。
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「海人ー!次お前鬼な!」
「……あ、いいよ」
返事が少し遅れる。
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走り出す。
でも頭の中は——
さっきの姿。
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(なんなんだよ、これ)
イライラするわけじゃない。
でも落ち着かない。
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捕まえる。
逃げる。
笑う。
いつも通りのはずなのに、
どこか上の空。
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ふと。
茉白の近くを通る。
一瞬だけ、目が合う。
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「……」
茉白は特に何も言わない。
いつも通りの顔。
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(……)
なぜか、それが少しだけ引っかかる。
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(俺だけ?)
そんな感覚。
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遊び終わり。
水を飲んで、少し休憩。
海人は無意識に、またそっちを見る。
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今度は、他の子と少しだけ話してる。
笑ってる。
自然な笑顔。
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(……ああいう顔、すんだな)
ぽつりと思う。
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別に珍しいことじゃない。
他の子とも普通に話してるだけ。
なのに。
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(なんで俺の時ああなんだよ)
昨日の会話を思い出す。
「変だよね」
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(……変なのはお前だろ)
心の中で言い返す。
でも——
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(……違うか)
すぐに消える。
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なんとなく分かってきてる。
でも、まだ言葉にはできない。
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ただ一つだけ、はっきりしてるのは
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(茉白、気になる)
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それだけ。
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一方、茉白。
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「茉白ちゃん、一緒に遊ぼ?」
「いいよ」
いつも通り、普通に返す。
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さっき一瞬目が合ったことも、
海人が近くを通ったことも、
特に気にしていない。
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(さっきのやつ、また見てたな)
とは思う。
でも——
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(まあいいか)
それで終わり。
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特別な意味はない。
気になる理由も考えない。
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ただのクラスの一人。
少し変なやつ。
それだけ。
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でも。
海人の視線が向くたび、
少しずつ、
茉白の中にも“海人”が残り始めていた。




