厄介
■小4・放課後
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教室、少し人が減った時間。
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露真は席でカバンを閉じようとしてる。
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そのとき。
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「それ」
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低い声。
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顔を上げる。
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奏。
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「……なに」
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「さっきの」
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視線が、カバンに向いてる。
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(……見てたのか)
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「別に」
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ごまかそうとする。
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「見せろ」
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即、核心。
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「やだ」
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即拒否。
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「なんで」
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「……なんとなく」
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少し間。
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奏、じっと見る。
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「それ、自分で作ったのか」
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「……知らねぇ」
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「買った?」
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「知らねぇって」
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少しイラつく。
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でも。
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「……」
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奏は引かない。
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「どこで手に入れた」
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その質問。
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初めて、
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止まる。
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「……」
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考える。
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(……どこで?)
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思い出そうとする。
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でも。
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何も出てこない。
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「……わかんねぇ」
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初めて、
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ちゃんと答える。
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■違和感の言語化
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「わからないのに持ってるのか」
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「……」
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「変だろ」
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ドクン。
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その一言。
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胸に引っかかる。
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(……変)
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確かに。
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(なんで持ってるんだよ)
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理由がない。
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記憶もない。
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なのに。
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(なんで手放したくねぇんだ)
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「……関係ねぇだろ」
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少し強く返す。
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でも。
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声が少しだけ、揺れてる。
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■奏の一言
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「……大事なんだろ」
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「……は?」
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「だから触らせなかった」
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図星。
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「……別に」
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でも否定が弱い。
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「理由がわからないのに大事なもの」
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少しだけ間。
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「それ、一番厄介だな」
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「……」
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露真、黙る。
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■初めての揺れ
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(……なんだよそれ)
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頭の中、
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ぐるっとする。
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(理由、ねぇのに)
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指輪のこと考える。
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白い花。
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触ったときの感覚。
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(……なんか)
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ほんの一瞬。
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誰かの“影”みたいなのが、
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浮かびかける。
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「……っ」
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でも、
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すぐ消える。
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「……なんでもねぇ」
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顔を逸らす。
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■奏の視線
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(……今の)
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少しだけ、
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変化を感じる。
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でも何も言わない。
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「……まあいい」
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それだけ言って、
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席を離れる。
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■残るもの
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露真、一人。
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カバンを開ける。
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指輪を見る。
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「……」
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前より、
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少しだけ、
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重く感じる。
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(……なんなんだよ)
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初めて、
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“気にし始める”。




