いつもの帰り道
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十二月。
初冬。
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放課後。
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「さようならー!」
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教室に元気な声が響く。
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「海くん」
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「ん?」
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「帰ろ」
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「……おう」
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二人はいつものように教室を出た。
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外は少し寒い。
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白い息が、
ふわっと空へ溶けていく。
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「見て」
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茉白が息を吐く。
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「今日も白い」
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「毎回やるな」
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「だって楽しいもん」
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海人も少しだけ息を吐く。
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白い。
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「海くんもやった」
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「……寒いだけだ」
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「ふふっ」
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茉白が笑う。
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それだけで、
海人も少し笑ってしまう。
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帰り道。
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「今日の給食おいしかったね」
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「カレーな」
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「うん!」
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「海くん、おかわりしてた」
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「……腹減ってた」
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「見てたよ」
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「見るなよ」
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「なんで?」
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「なんでもねぇ」
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また二人で笑う。
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少し歩く。
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冬の風が吹く。
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茉白はマフラーを口元まで上げた。
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「寒い?」
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海人が聞く。
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「ちょっとだけ」
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「風強いし」
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「……そうだな」
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少しだけ歩く速さをゆるめる。
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「海くん」
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「ん?」
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「ありがとう」
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「なにが」
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「合わせてくれたでしょ」
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海人は少し照れて前を向く。
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「……気のせいだ」
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「またまた」
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茉白は楽しそうに笑う。
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公園の前を通る。
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「あ」
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ベンチの上に、
小鳥が一羽止まっていた。
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「かわいい」
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二人は立ち止まる。
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小鳥は首をかしげると、
羽を広げて飛び立った。
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「行っちゃった」
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「だな」
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「でも見られてよかった」
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海人は静かにうなずく。
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「……うん」
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また歩き始める。
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「もうすぐ冬休みだね」
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「そうだな」
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「またいっぱい遊ぼうね」
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「おう」
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「約束」
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茉白が小指を差し出す。
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海人は少し困った顔をする。
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「……またそれか」
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「いいじゃん」
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「約束」
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少しだけため息をついて、
海人も小指を出した。
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「これでいいか」
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「うん!」
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小さな指が重なる。
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ほんの一瞬だけ。
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「じゃあ決まり!」
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「……忘れんなよ」
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「忘れない!」
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分かれ道に着く。
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「じゃあまた明日!」
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茉白が笑顔で手を振る。
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「また明日」
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海人も小さく手を振り返す。
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茉白は走るように家へ向かう。
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その後ろ姿を、
海人は少しだけ見送った。
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(……また明日)
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それは、
いつもと変わらない言葉。
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二人とも、
明日もまた笑って会えると信じていた。
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何気なく過ぎていく毎日。
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何気なく交わす「また明日」。
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その当たり前が、
どれほど大切だったのか。
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まだ二人は、
知ることはなかった。




