落ち葉のしおり
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秋。
放課後。
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「海くん」
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「ん?」
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「この前拾った葉っぱね」
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茉白がランドセルから、
赤いもみじを取り出す。
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「まだ持ってたのか」
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「うん!」
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「大事にしてた」
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少し照れくさそうに笑う。
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「でもね」
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「?」
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「このままだとボロボロになっちゃう」
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海人は葉っぱを見る。
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少しだけ乾いて、
丸まり始めていた。
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「たしかに」
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「どうしようかなぁ」
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少し考えていると、
図工室の前を通る。
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「あ!」
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茉白が立ち止まる。
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「先生が前に言ってた!」
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「本にはさむと、
きれいなしおりになるんだって!」
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「しおり?」
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「うん!」
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「作ってみようよ!」
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「……別にいいけど」
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放課後の図工室。
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先生に紙を一枚借りる。
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二人で葉っぱを並べる。
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「どれにしようかな」
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茉白は大事そうに、
赤いもみじを選ぶ。
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海人はランドセルから、
あの日受け取った葉っぱを取り出した。
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「まだ持ってたの?」
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茉白が驚く。
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「……なんとなく」
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ぶっきらぼうに答える。
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本の間に、
そっと葉っぱをはさむ。
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「これでいいのかな」
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「たぶん」
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「できるまで待つんだよね」
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「そうじゃねぇ?」
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二人は本を閉じる。
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「楽しみだね」
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「……だな」
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数日後。
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昼休み。
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「海くん!」
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茉白が嬉しそうに駆け寄る。
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「できた!」
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本から、
一枚のもみじを取り出す。
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きれいに乾いた、
真っ赤なしおり。
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「すごい!」
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「ちゃんとできた!」
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海人も自分の本を開く。
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「……お」
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こちらも、
きれいに仕上がっていた。
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「海くんのもきれい!」
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「そうだな」
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二人は自分のしおりを見比べる。
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「ねぇ」
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「?」
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「交換しない?」
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海人は少し驚く。
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「なんで」
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「だって」
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茉白は少し照れながら笑う。
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「わたし、
海くんが拾ってくれた葉っぱ持ってたい」
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海人の胸が、
少しだけ高鳴る。
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「……」
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言葉が出ない。
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「だめ?」
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「……いや」
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海人は静かにしおりを差し出した。
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「ほら」
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「ありがとう!」
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茉白も自分のしおりを渡す。
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「はい!」
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海人は受け取る。
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真っ赤なもみじ。
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(……これ)
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茉白が大事にしていた葉っぱ。
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「大切にするね」
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茉白が笑う。
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「……おう」
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海人も小さくうなずいた。
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帰り道。
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ランドセルの中には、
交換したしおり。
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「本読むたびに思い出すね」
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茉白が嬉しそうに言う。
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「……そうだな」
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春のシロツメクサ。
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秋の落ち葉。
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季節が変わるたび、
二人の思い出も、
少しずつ増えていく。
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そしてその思い出は、
本の間に挟まれたしおりのように、
静かに、
大切に積み重なっていくのだった。




