秋の帰り道
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放課後。
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「さようならー!」
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教室から元気な声が聞こえる。
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「海くん!」
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「ん?」
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「帰ろ!」
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「……おう」
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二人はいつもの帰り道を歩き始めた。
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夏の暑さはすっかりなくなり、
秋風が頬を優しくなでる。
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「涼しいね」
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「だな」
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「少し前まで暑かったのに」
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「早いよね」
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海人は空を見上げる。
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高く澄んだ青空。
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「あっ」
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茉白が指をさす。
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「見て!」
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空を見上げると、
渡り鳥が列になって飛んでいた。
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「ほんとだ」
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二人は立ち止まる。
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鳥たちはゆっくりと、
秋空を飛んでいく。
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「どこまで行くんだろ」
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「南じゃねぇの」
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「すごいね」
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「迷わないのかな」
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「知らねぇ」
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「ふふっ」
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また歩き出す。
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サクッ。
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サクサク。
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落ち葉を踏む音が響く。
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「この音好き」
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茉白が笑う。
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海人も足元を見る。
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「……俺も」
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「え?」
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茉白が驚いて海人を見る。
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「今、『俺も』って言った?」
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「……言った」
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「珍しい!」
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「そんな珍しいか」
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「うん!」
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茉白は嬉しそうに笑う。
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「海くんが『同じ』って言ってくれると嬉しい」
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海人は少しだけ照れる。
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「……そうかよ」
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風が吹く。
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茉白の長い髪が、
ふわりと揺れた。
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海人は思わず目で追ってしまう。
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(……また見てる)
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自分で気づいて、
少しだけ目を逸らした。
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「どうしたの?」
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「……なんでもねぇ」
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「また?」
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「また」
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茉白はくすっと笑う。
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「海くんの『なんでもない』って」
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「全然なんでもなくないよね」
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「……うるせぇ」
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耳が少し赤くなる。
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「ふふっ」
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茉白はそれ以上聞かなかった。
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少し歩くと、
いつもの分かれ道が見えてきた。
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「もうここかぁ」
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「今日は早かったね」
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「話してたからじゃねぇ?」
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「かもね」
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少しだけ沈黙。
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「海くん」
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「ん?」
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「秋って好き?」
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海人は少し考えた。
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「……嫌いじゃねぇ」
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「春も好きだけど」
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「秋も悪くない」
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茉白は嬉しそうに笑う。
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「わたしも!」
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「海くんと歩く帰り道、
春も夏も好きだったけど」
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「秋も好き」
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海人は少し照れながら前を向く。
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「……毎日歩いてるだけだろ」
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「うん」
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茉白は優しくうなずいた。
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「でも、一緒だから」
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その一言に、
海人は返事ができなかった。
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胸の奥が、
少しだけあたたかくなる。
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「……また明日な」
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照れ隠しのように言う。
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「うん!」
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「また明日!」
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夕日に染まる帰り道。
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二人の影は、
少しずつ長く伸びながら、
秋の街に静かに溶け込んでいった。




