読書の秋
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秋。
昼休み。
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「今日は図書室行ってくる」
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茉白が立ち上がる。
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「へぇ」
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海人は机に頬杖をついたまま返事をする。
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「本、借りたいんだ」
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「そうか」
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「じゃあ行ってくるね」
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「……おう」
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茉白が教室を出ていく。
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(図書室か)
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海人は窓の外を見る。
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しばらく考えて、
立ち上がった。
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「海人?」
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友達が声をかける。
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「どこ行くんだ?」
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「……図書室」
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「珍し!」
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笑われる。
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「うるせぇ」
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海人はそのまま歩き出した。
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図書室。
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静かな空気。
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本棚がずらりと並んでいる。
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「……」
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海人は周りを見渡す。
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(いた)
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窓際の席。
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茉白が静かに本を読んでいた。
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秋の日差しが差し込み、
長い髪がやわらかく光っている。
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(……)
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海人は少しだけ見とれた。
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「海くん?」
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顔を上げた茉白と目が合う。
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「え?」
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「なんでいるの?」
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「……本」
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「借りに来た」
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少しだけぎこちない。
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「そっか」
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茉白はにこっと笑う。
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「隣、空いてるよ」
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「……おう」
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海人は静かに席へ座る。
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二人とも本を開く。
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ページをめくる音だけが響く。
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静かな時間。
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「海くん」
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「ん?」
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「その本、おもしろい?」
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「まだ読んでねぇ」
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「そっか」
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また静かになる。
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数分後。
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「……あ」
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二人が同じ棚へ向かう。
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同じ一冊に、
同時に手を伸ばした。
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コツッ。
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指先が少しだけ触れる。
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「……!」
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「……!」
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二人とも慌てて手を引っ込める。
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「ご、ごめん」
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「……いや」
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少しだけ気まずい空気。
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「海くんが先でいいよ」
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「いや、お前読め」
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「でも」
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「いいから」
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海人は本を差し出した。
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「ありがとう」
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茉白は嬉しそうに受け取る。
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「読み終わったら貸すね」
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「……別に」
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いつもの返事。
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でも、
少しだけ笑っていた。
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昼休みも終わりに近づく。
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「もう戻ろっか」
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「だな」
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借りた本を抱えて、
二人は図書室を出る。
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廊下を並んで歩く。
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「海くんって」
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「ん?」
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「静かな場所、意外と好き?」
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海人は少し考える。
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「……嫌いじゃねぇ」
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「わたしも」
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茉白が笑う。
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「また一緒に図書室来ようね」
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海人は少し照れながら前を向く。
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「……時間あったらな」
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「うん!」
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秋のやわらかな日差しの中、
二人は借りた本を大事そうに抱えながら、
教室へ戻っていった。




