秋の遠足
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秋。
遠足の日。
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「今日はみんなで仲良く行動してください」
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先生の声が響く。
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「はーい!」
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子どもたちが元気よく返事をする。
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海人はリュックを背負い、
友達と話していた。
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その少し先では、
茉白も友達と笑っている。
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「海くん!」
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目が合う。
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「今日も楽しもうね!」
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「……おう」
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少し照れながら返事をした。
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目的地に到着。
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広い自然公園。
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「それじゃあ班ごとに自由行動!」
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先生の合図で、
子どもたちが一斉に歩き始めた。
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「こっち行こう!」
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「待ってよー!」
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にぎやかな声が響く。
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海人も班のみんなと歩く。
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でも。
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(……あれ)
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無意識に、
茉白の姿を探していた。
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少し離れた場所で、
友達と楽しそうに歩いている。
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(いた)
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それだけで、
少し安心する。
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しばらくして。
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「お弁当の時間でーす!」
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広場にシートを広げる。
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「いただきます!」
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みんなでお弁当を食べ始めた。
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「海くん!」
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茉白が近くまでやって来る。
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「おやつ交換しない?」
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「……いいけど」
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茉白は小さなクッキーを差し出す。
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「はい!」
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「ありがと」
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海人は自分のお菓子を一つ渡した。
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「これ好きなんだ」
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「へぇ」
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「海くんも食べてみて!」
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「……うまい」
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「でしょ!」
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茉白が嬉しそうに笑う。
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午後。
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班ごとに散策。
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木々の間を歩いていると、
先生が声をかけた。
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「二十分後に入口へ集合してください!」
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「はーい!」
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みんなが返事をする。
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海人たちは歩き始めた。
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その時。
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(……あれ)
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もう一度、
辺りを見る。
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茉白がいない。
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「……」
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さっきまで見えていたはずなのに。
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「海人?」
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友達が声をかける。
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「どうした?」
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「……いや」
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そう答えながらも、
目は周りを探していた。
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(どこ行った)
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少しだけ胸がざわつく。
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「茉白!」
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思わず名前を呼ぶ。
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返事はない。
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少し歩く。
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すると、
木の向こうから声が聞こえた。
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「海くーん!」
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振り向く。
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茉白が小走りでやって来た。
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「いた!」
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海人は思わず大きく息をつく。
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「どこ行ってたんだよ」
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「先生に落とし物届けてたの」
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茉白は少し困ったように笑う。
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「ごめんね」
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「……」
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海人は少しだけ黙る。
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「心配した」
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ぽつり。
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思わず出た本音。
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茉白は目を丸くする。
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「……ごめん」
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「次からちゃんと言う」
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海人は照れくさそうに頭をかく。
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「……それならいい」
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集合場所まで、
二人は並んで歩いた。
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「海くん」
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「ん?」
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「探してくれてありがとう」
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「……当たり前だろ」
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ぶっきらぼうに答える。
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でも、
その表情はどこか優しかった。
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帰りのバス。
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窓の外には、
赤や黄色に染まった山々が広がっている。
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茉白は少し眠そうに窓にもたれた。
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海人はその横顔をちらっと見る。
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(……よかった)
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今日も、
ちゃんと隣で笑っている。
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それだけで十分だった。
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秋空の下、
遠足はたくさんの思い出を残して終わった。




