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好きの始まり




外遊びのあと。


少しだけ涼しい風が吹いて、子どもたちは自由に遊んでいる時間。


茉白は、ブランコの近くでぼーっと立っていた。


特に何かをするでもなく、ただ空を見ている。



少し離れたところ。


海人は友達と話していた。


「なあ、次なにやる?」


「かくれんぼ!」


「いいじゃん!」


盛り上がる声。


でも——


海人の視線は、ふと逸れる。


また、そっちを見る。


ブランコのところ。


(……また茉白)


無意識。


気づいたら見てる。


見てる理由も、特にない。


ただ——なんか、気になる。



「海人?」


「え?」


「聞いてる?」


「あー、聞いてる聞いてる」


適当に返す。


でも頭は、半分そっち。



何度目かの視線。


それに——


茉白が気づく。


(……また見てる)


さっきから、何回か感じてた。


ちらっと見ると、目が合いそうになって逸らされる。


(なにあれ)


少し首をかしげる。


嫌な感じじゃない。


でも、なんか変。



そのまま、茉白は歩き出す。


まっすぐ。


迷いなく。


海人の方へ。



「……な、なに?」


急に目の前に来られて、少しだけたじろぐ海人。


茉白は、じっと見る。


少し不思議そうな顔。


「さっきからさ」


「え」


「なんで見てんの」


ストレート。


遠慮なし。



一瞬、間。


海人の思考が止まる。


(え、バレてた?)


一気に顔が熱くなる。


理由なんて説明できない。


自分でも分かってないのに。



「どうしたの、海人」


名前を呼ばれる。


自然に、当たり前みたいに。


その距離の近さに——余計に焦る。



「……っ、べつに!」


勢いよく顔をそらす。


耳まで赤い。


「なんでもねぇし!」


少し強めの声。


でも、どこか逃げてる。



茉白は、きょとんとする。


(……なにそれ)


意味がわからない。


怒ってるわけでもなさそう。


でも変。



「変なの」


ぽつり。


それだけ言って、くるっと背を向ける。



残された海人。


(……なんだよ今の)


顔の熱が引かない。


心臓も、なんか速い。


理由は分からない。


でも——


さっきより、もっと茉白が気になる。


目で追ってしまう。


声を聞くと落ち着かない。


笑うと、なんか嬉しい。



海人はまだ知らない。


これが、


“好き”の始まりだってことを。

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