118/150
離すなよ
⸻
秋。
遠足の帰り道。
山道を歩いている。
⸻
「気をつけろよ」
⸻
「うん」
⸻
茉白が落ち葉を見ながら歩いている。
⸻
その時。
⸻
「あっ!」
⸻
小さな段差につまずく。
⸻
ぐらっ。
⸻
転びそうになった瞬間、
⸻
パシッ。
⸻
海人がとっさに茉白の手首をつかむ。
⸻
「危ねぇ!」
⸻
「……!」
⸻
二人とも固まる。
⸻
海人は無意識だった。
⸻
「大丈夫か?」
⸻
「……う、うん」
⸻
少しだけ顔が赤い茉白。
⸻
海人も手を離そうとして、
⸻
(……)
⸻
一瞬だけ止まる。
⸻
「……ほら」
⸻
慌てて手を離す。
⸻
「悪い」
⸻
「ううん」
⸻
二人とも少し照れてしまう。
⸻
歩き始める。
⸻
でも、
今度は茉白が少しだけ海人の制服の袖をつまむ。
⸻
「……?」
⸻
「また転びそうだから」
⸻
恥ずかしそうに笑う。
⸻
海人は少し照れながら、
⸻
「……好きにしろ」
⸻
とだけ答える。
⸻
帰り道、
茉白は袖をつまんだまま歩く。
海人は何も言わない。
⸻
(……まあ)
⸻
(これならいいか)
⸻
そんなふうに思う海人だった。
⸻




