夕焼けの帰り道
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夏休み。
夕方。
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空はゆっくりとオレンジ色に染まり始めていた。
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「もう夕方だね」
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茉白が空を見上げる。
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「……だな」
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二人はいつもの帰り道を並んで歩く。
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昼間の暑さは少しだけやわらぎ、
心地よい風が吹いていた。
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「今日もいっぱい遊んだね」
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「そうか?」
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「うん!」
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「プール行って」
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「虫取りして」
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「花火もやって」
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「ひまわりも見たし」
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指を折りながら数える茉白。
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「夏休みって楽しいね」
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海人は少しだけ笑う。
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「……遊びすぎだけどな」
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「えー?」
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「まだ遊び足りないよ」
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「体力あるな」
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「海くんもでしょ?」
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「普通」
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「また普通!」
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二人は笑い合う。
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少し歩くと、
いつもの公園が見えてきた。
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ベンチの前で足を止める。
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「少し休もう」
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「おう」
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並んで座る。
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夕焼けが町をオレンジ色に染めていた。
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「きれい……」
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茉白が小さくつぶやく。
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海人は夕焼けを見る。
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でも、
少しだけ視線は茉白にも向いていた。
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夕日に照らされた横顔。
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風で揺れる長い髪。
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(……)
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思わず見つめてしまう。
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「海くん?」
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「……ん?」
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「また見てた」
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「見てねぇ」
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「見てたよ」
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少し笑う茉白。
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海人は照れくさそうに空を見上げる。
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「……夕焼け見てた」
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「ほんと?」
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「……たぶんな」
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「ふふっ」
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茉白は何も言わず、
隣に座っていた。
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沈黙。
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でも、
嫌な沈黙じゃない。
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セミの鳴き声も少しずつ減っていく。
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「夏休み」
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茉白がぽつりと言う。
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「もう終わっちゃうね」
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「……だな」
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「ちょっと寂しい」
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海人は少しだけ考えた。
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「学校始まっても」
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「?」
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「帰り道は変わんねぇだろ」
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茉白は海人を見る。
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「……うん!」
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その一言だけで、
少しだけ寂しさが消えた。
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「じゃあ」
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茉白が立ち上がる。
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「また明日ね」
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「おう」
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二人はいつもの分かれ道まで歩く。
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「海くん」
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「ん?」
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「今年の夏、楽しかった」
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海人は少しだけ笑う。
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「……俺も」
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短い返事。
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でも、
その言葉に嘘はなかった。
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夕焼けに照らされた二人の影は、
いつもより少しだけ長く伸びていた。
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夏はもうすぐ終わる。
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それでも二人には、
また明日がある。
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そんな当たり前の日々が、
何より大切な夏の思い出になっていた。




