ひまわり畑
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夏休み。
青い空に、大きな入道雲。
蝉の鳴き声が響いている。
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「海くん!」
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茉白が少し先を歩きながら振り返る。
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「こっち来て!」
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「なんだよ」
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「いいから!」
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海人は少しため息をつきながらも、
後をついていく。
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少し歩くと――
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一面に広がる、
ひまわり畑。
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「わぁ……!」
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茉白の目が輝く。
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「すごい!」
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背の高いひまわりが、
夏の空へ向かって咲いている。
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「こんなにいっぱい……!」
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茉白は嬉しそうに歩き出した。
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「海くん見て!」
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「でかいね!」
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「……そうだな」
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風が吹く。
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ひまわりが一斉に揺れた。
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「少し歩いてみよう!」
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「おい」
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茉白は花の間へ入っていく。
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「待てって」
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ひまわりは茉白の背よりずっと高い。
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少し歩いただけで、
姿が見えなくなった。
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「茉白?」
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返事がない。
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「……おい」
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海人は辺りを見回す。
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「茉白!」
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少しだけ声が大きくなる。
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(どこ行った)
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風でひまわりが揺れる。
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見渡しても見つからない。
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(……まさか)
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胸が少しざわつく。
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「茉白!」
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もう一度呼ぶ。
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「海くーん!」
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少し離れた場所から声がした。
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「こっちー!」
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ひまわりの間から、
茉白がひょこっと顔を出す。
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「……」
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海人は大きく息をついた。
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「いた」
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「ごめん!」
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茉白が走ってくる。
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「お花見てたら夢中になっちゃって」
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海人は少しだけ眉をひそめる。
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「勝手に行くな」
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「ごめんって」
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「見えなくなっただろ」
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少し強めの口調。
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茉白は少し驚いた顔をする。
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「……心配した?」
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海人は一瞬黙る。
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「……」
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図星だった。
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「……別に」
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いつもの返事。
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でも。
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「声、大きかったよ?」
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「二回も呼んでた」
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茉白が少し笑う。
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海人は照れくさそうに顔を逸らした。
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「……迷子になる方が悪い」
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「ふふっ」
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茉白は優しく笑う。
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「ごめんね」
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「もう勝手に行かない」
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海人は小さくうなずいた。
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「……ならいい」
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二人は並んで歩き始める。
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「海くん」
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「ん?」
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「ありがとう」
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「なにが」
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「探してくれて」
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海人は少しだけ照れながら答えた。
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「……当たり前だろ」
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その言葉に、
茉白は嬉しそうに笑った。
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帰り道。
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夕日に照らされたひまわり畑を振り返る。
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「また来たいね」
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「……ああ」
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短い返事。
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でも、
今度は二人とも、
ちゃんと隣を歩いていた。




