夏休みの宿題
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夏休みも終わりに近づいたある日。
外ではセミが元気よく鳴いていた。
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「海くーん!」
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茉白が海人の家の前で手を振る。
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「おう」
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「今日は宿題やろ!」
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「終わってねぇのか?」
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「……まだちょっとだけ」
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海人は少しため息をつく。
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「ちょっとじゃねぇだろ」
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「えへへ……」
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「笑ってごまかすな」
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二人は海人の家へ入る。
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リビング。
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机の上に宿題を広げる。
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「算数からやる!」
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「好きにしろ」
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茉白は問題を見つめる。
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「うーん……」
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鉛筆が止まる。
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「海くん」
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「ん?」
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「これ分かんない」
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海人はノートをのぞき込む。
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「ここか」
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「うん」
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「これ、先にこっち計算するんだよ」
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「え?」
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「ほら」
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海人は紙に式を書いて説明する。
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「……あ!」
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茉白の表情が明るくなる。
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「そういうことか!」
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「できそうか?」
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「うん!」
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カリカリ……
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鉛筆が動く。
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「できた!」
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「ちゃんと合ってる」
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「やった!」
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茉白は嬉しそうに笑った。
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「海くんって教えるの上手だね」
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「……普通」
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「また普通って言った」
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「普通だからな」
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「ふふっ」
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しばらくして。
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「終わったー!」
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茉白が大きく伸びをする。
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「疲れたぁ」
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「まだ漢字あるぞ」
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「えぇー!」
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机に突っ伏す。
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「海くん代わりにやって」
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「やるわけねぇだろ」
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「一文字だけ!」
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「だめ」
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「けち」
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「当たり前だ」
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その時。
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トコトコ……
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小さな足音が聞こえる。
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「にぃちゃ!」
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海里だった。
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「ましろ!」
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茉白を見ると、
嬉しそうに笑う。
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「海里!」
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茉白が手を振る。
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海里はそのまま茉白の膝にぴたっとくっついた。
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「宿題してるんだよ」
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「しゅくだい?」
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首をかしげる海里。
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「そう」
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「お勉強」
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「べんきょー!」
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嬉しそうに真似をする。
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海人はその様子を見て、
少しだけ笑った。
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(また懐いてんな)
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宿題も終わり、
外を見ると夕焼けが広がっていた。
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「もう夕方だ」
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「ほんとだ」
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窓からオレンジ色の光が差し込む。
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「夏休みも終わっちゃうね」
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茉白が少し寂しそうに言う。
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「……だな」
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「もっと遊びたかったな」
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海人は少しだけ考えて、
静かに答えた。
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「学校始まっても遊べばいいだろ」
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茉白は目を丸くする。
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「……そっか!」
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すぐに笑顔になる。
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「そうだよね!」
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「放課後もあるし!」
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「休みの日もある!」
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海人は少し照れながら目を逸らした。
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「……そういうこと」
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茉白は嬉しそうに笑う。
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「じゃあ約束ね」
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「また遊ぼう」
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海人は小さくうなずく。
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「……おう」
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夏休みはもうすぐ終わる。
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でも二人にとっては、
学校が始まっても一緒に過ごす時間は変わらない。
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そんな当たり前の約束が、
二人には何よりもうれしかった。




