虫取り大作戦
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夏休み。
朝から強い日差しが照りつけていた。
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「海くーん!」
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公園の入口で茉白が手を振る。
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「遅い」
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「ごめん、ごめん!」
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茉白は笑いながら駆け寄る。
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今日は海人と虫取りをする約束の日だった。
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海人の手には虫取り網。
反対の手には虫かご。
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「行くぞ」
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「うん!」
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二人は公園の奥へ入っていく。
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「セミいるかな?」
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「朝だからいるだろ」
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「カブトムシは?」
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「昼はあんまりいねぇ」
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「海くん詳しいね」
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「普通」
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「また普通って言った」
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茉白が笑う。
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木々の間を歩いていく。
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ジジジジジ……
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セミの鳴き声が響く。
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「いた!」
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茉白が木を指差す。
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「ほんとだ!」
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高いところにアブラゼミが止まっていた。
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「海くん!」
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「お願い!」
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海人は静かに近づく。
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ゆっくり。
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ゆっくり。
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網を持ち上げる。
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「……今」
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パサッ!
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「やった!」
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セミが網の中に入った。
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「すごーい!」
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茉白は目を輝かせる。
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「海くんすごい!」
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「これくらい普通」
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照れ隠しのように答える。
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「かっこいい!」
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その一言で、
海人は少しだけ固まる。
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「……うるせぇ」
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耳が少し赤い。
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「ふふっ」
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茉白は嬉しそうに笑った。
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その後。
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「わっ!」
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茉白の目の前を大きなトンボが飛ぶ。
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「待ってー!」
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追いかける。
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でも。
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「きゃっ!」
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木の根につまずきそうになる。
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「危ねぇ!」
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海人が腕をつかえる。
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「大丈夫か?」
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「う、うん!」
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少し恥ずかしそうに笑う茉白。
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「ありがとう」
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「ちゃんと前見ろ」
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「はーい」
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二人はまた歩き始める。
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その時。
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「見て!」
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茉白が木を指差した。
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「これ何?」
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木に残っていた、
セミの抜け殻。
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「抜け殻だ」
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「初めて見た!」
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「持ってみる?」
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「えっ」
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少し迷う。
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「……やっぱいい」
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海人が笑う。
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「虫は平気なのに?」
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「抜け殻はなんか違う!」
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「なんだそれ」
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二人で笑い合う。
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帰る頃には、
虫かごの中にはセミが一匹。
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「今日は大成功だね」
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「まあな」
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「楽しかった!」
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「……俺も」
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海人は小さくつぶやく。
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「え?」
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「なんでもねぇ」
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また照れ隠し。
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夕日に染まる帰り道。
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虫かごを仲良くのぞき込みながら、
二人はゆっくり歩いて帰った。
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夏の思い出が、
また一つ増えた。




