プールの日
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夏休み。
朝から青空が広がっていた。
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「海くん!」
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待ち合わせ場所に茉白がやって来る。
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「お待たせ!」
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「……遅くねぇ」
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海人は小さく笑う。
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今日は近くの市民プールへ遊びに行く約束をしていた。
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「楽しみ!」
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「おう」
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二人は並んで歩き出す。
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プールに着くと、
子どもたちの楽しそうな声が響いていた。
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「うわぁ!」
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茉白は目を輝かせる。
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「広いね!」
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「夏休みだからな」
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着替えを済ませ、
プールサイドへ。
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「じゃあ行くぞ」
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海人は迷いなく水へ飛び込んだ。
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バシャーン!
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勢いよく泳いでいく。
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「海くん、速い!」
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茉白は思わず拍手する。
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海人はぐるっと一周泳いで戻ってきた。
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「泳がねぇの?」
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「……」
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茉白は少し困ったように笑う。
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「実は……」
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「泳げない」
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「……は?」
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海人は目を丸くする。
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「犬かきも?」
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「できない」
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「浮くのも?」
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「ちょっとだけ……」
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海人は少しため息をつく。
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「じゃあ何しに来た」
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「海くんと遊びたかったから」
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あっさりと言う。
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「……」
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海人は言葉に詰まる。
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(そういうこと普通に言うなよ)
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胸が少しだけ熱くなる。
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「……じゃあ」
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海人は浅い場所を指さした。
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「こっち来い」
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「うん」
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茉白はゆっくり水の中へ入る。
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「冷たい!」
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思わず笑う。
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「まず立てるだろ」
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「うん」
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「肩の力抜け」
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「こう?」
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「違う」
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海人は少し近づく。
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「浮くときはこう」
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両手で水を押す動きを見せる。
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茉白も真似する。
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「できない……」
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少し沈む。
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「わっ!」
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ぐらりと体勢を崩した。
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「きゃっ!」
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その瞬間。
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海人がとっさに腕をつかむ。
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「危ねぇ」
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「ご、ごめん!」
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茉白は少し顔を赤くする。
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海人も、
手を離すタイミングが分からない。
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「……」
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「……」
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一瞬だけ目が合う。
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「ほら」
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海人は慌てて手を離した。
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「ちゃんと立て」
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「うん」
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少し照れくさそうに笑う茉白。
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そのあとも、
海人は泳ぎ方を教え続けた。
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少しずつ。
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少しずつ。
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茉白も水に慣れていく。
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「見て!」
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両足を浮かせる。
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「少し浮いた!」
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「おう」
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海人は小さくうなずく。
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「できたじゃねぇか」
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「ほんと?」
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「ちゃんと浮いてた」
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茉白は嬉しそうに笑う。
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「ありがとう、海くん!」
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その笑顔を見て、
海人も少しだけ笑った。
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「……次は泳げるようになるな」
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「うん!」
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夏の青空の下。
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プールに響く笑い声は、
いつまでも途切れることがなかった。




