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夏祭り

■小3の夏祭り


夜。


提灯の明かり。


にぎやかな音。



「人多いな」



「うん」



並んで歩く、海人と茉白。



茉白は浴衣。


淡い色に、小さな花柄。



髪は少しだけまとめてあって、


いつもと違う。



海人、ちらっと見る。



(……)



目が止まる。



(……なんだそれ)



いつもと違う。


でも——



(……似合ってる)



強く思う。



でも。



「……暑くね?」



全然違うこと言う。



「ちょっとね」



茉白は普通に返す。




■祭りの中



「これやる?」



「やる」



金魚すくい。



「全然取れねぇ」



「下手だね」



「うるせぇ」



少し笑う。




綿あめ。



「甘」



「でしょ」




射的。



「当たんねぇ」



「惜しい」




普通の時間。



でも——



どこか少しだけ、



“特別”。




■ふとした瞬間



人混みの中。



少しだけはぐれそうになる。




「……こっち」




海人が手を引く。




一瞬。




「……」




そのまま、離さない。




(……あ)




気づく。



でも、




(……いいか)




茉白も、そのまま。




言葉はない。




でも距離が、




少しだけ近い。




■祭りの終わり



人も少なくなって、



帰り道。




静か。




虫の声。



夜の空気。




さっきまでのにぎやかさが、



嘘みたいに消える。




並んで歩く。




手は——



もう離れてる。




でも、




さっきの感覚が残ってる。




■空気が変わる瞬間



「海くん」




「なに」




「今日さ」




少しだけ間。




「楽しかった」





その一言。




ドクン。




(……は?)




「……ああ」




短く返す。




でも。




(なんだそれ)




心臓、うるさい。




■言えない言葉



風が少し吹く。




浴衣の袖が揺れる。




また、ちらっと見る。




(……やっぱ)




(似合ってる)




言いたい。




でも。




「……」




言えない。




代わりに——




「……転ぶなよ」





「転ばないよ」




少し笑う茉白。




(ちげぇだろ)




自分で思う。




■茉白の中



(……海くん)




今日のこと思い出す。




手、引かれたこと。




さっきの距離。




(……なんか)




胸が少しだけ、




ぎゅっとなる。




(……好き)




前より、




はっきり。




■海人の中



(……やべぇ)




夜。



静けさ。




全部が、




変に感じる。




(……こいつ)




横を見る。




(……こんなだったか?)




違う。




でも、




(……いい)




そして、




(……離したくねぇ)




初めて、




はっきり思う。




■今のふたり



もう、




ただの幼なじみじゃない。




でも、




まだ言えない。




この距離。





この夏、




確実に何かが変わった。


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