三人での遊び
■小3の夏、海人の家
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「暑……」
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海人、玄関でぼそっと言う。
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「ほんとだね」
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横で茉白も少し汗ばんでる。
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「おじゃまします」
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「いらっしゃい」
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母の声。
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リビングに入った瞬間——
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「ましろー!!」
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海里、爆走。
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「わっ」
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そのまま、
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ぎゅううう!!
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「おっと」
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茉白に抱きつく。
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「ましろー!きたー!」
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テンションMAX。
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「来たよ」
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しゃがんで目線合わせる茉白。
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「今日あそぶ!」
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「うん、遊ぶ」
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即決。
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(……はや)
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海人、少しだけ引く。
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(俺より即答じゃねぇか)
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■カオススタート
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おもちゃ広げて、
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すぐ遊びモード。
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「これなに?」
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「くるま!」
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「へぇー」
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完全に二人の世界。
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(……おい)
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海人、少し離れたとこで見てる。
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(俺の家だぞ)
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でも会話に入れない。
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(……なんだこれ)
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■守るための謎行動
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「……おい」
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急に近づく海人。
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「なに」
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「……これやる」
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急におもちゃを手に取る。
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「え?」
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「こうだろ」
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勝手に遊びに参加。
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「海くんもやるの?」
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「……別に」
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でも座る位置、
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めっちゃ近い。
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海里と茉白の間に、
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割り込む。
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「にぃちゃ!」
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「うるせぇ」
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でもちゃんと相手する。
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(……これでいいだろ)
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なぜか満足。
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■さらにズレる海人
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「ましろ、これ!」
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海里が茉白に見せる。
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「すごいね」
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またそっち。
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(……は?)
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海人、また引っかかる。
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「……おい」
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「なに?」
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「こっち見ろよ」
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「え?」
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無意識発言。
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(……は?俺)
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自分でびっくり。
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■茉白の反応
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「海くんも見てほしいの?」
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「ちがう」
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即否定。
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「じゃあなに」
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「……別に」
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でも。
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耳、赤い。
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■海里、空気読まない神
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「にぃちゃ!」
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「なんだよ」
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「ましろとあそぶ!」
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「……ああ」
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「にぃちゃも!」
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「……は?」
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「いっしょ!」
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一瞬、止まる。
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(……それでいいのか)
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少しだけ考えて、
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「……まあいい」
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座り直す。
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■三人の夏
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窓から入る風。
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少し暑い空気。
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笑い声。
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海里が笑って、
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茉白が笑って、
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海人も少しだけ笑う。
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(……なんだこれ)
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変な感じ。
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でも。
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(……悪くねぇ)
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■少しだけ特別な瞬間
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「海くん」
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「なに」
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「これ」
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おもちゃ渡される。
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「一緒にやろ」
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一瞬、止まる。
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(……あ)
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さっきの“取られる感じ”が、
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少し消える。
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「……おう」
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自然に返す。




