誤解
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昼休み。
教室はいつものように賑やかだった。
海人は友達と話している。
茉白は近くの席で本を読んでいた。
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「なあ」
男子がにやっと笑う。
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「海人さ」
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「ん?」
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「最近さ」
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「茉白と一緒にいすぎじゃね?」
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「は?」
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別の男子も笑いながら口を開く。
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「毎日一緒に帰ってるし」
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「家も行き来してるんだろ?」
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「仲良すぎ!」
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海人は眉をひそめる。
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「だから?」
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「だからって……」
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男子たちは顔を見合わせる。
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そして。
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「お前ら付き合ってんの?」
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教室が一瞬静かになる。
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「……は?」
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海人が固まる。
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少し離れた席の茉白も、
思わず顔を上げた。
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「え?」
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教室中の視線が、
二人に集まる。
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「絶対そうじゃん!」
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「だって毎日一緒じゃん!」
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「海人、茉白のことめっちゃ気にしてるし!」
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「茉白も海人ばっか見てる!」
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「違ぇよ!!」
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海人が勢いよく立ち上がる。
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そのほぼ同時。
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「違うよ!!」
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茉白も真っ赤な顔で立ち上がった。
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教室がしんとなる。
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海人と茉白は、
お互いを見る。
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「……」
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「……」
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顔が真っ赤。
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「だから!」
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海人が慌てて言う。
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「付き合ってねぇし!」
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茉白も慌てて続ける。
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「そうだよ!」
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「友達だから!」
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「ね!」
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「……お、おう!」
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二人とも必死。
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その様子を見たクラスのみんなは、
少し黙ったあと――
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「あははは!」
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一斉に笑い出した。
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「息ぴったりじゃん!」
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「ほら!」
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「やっぱ怪しい!」
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「違ぇって!!」
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「違うってば!!」
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二人はまた同時に叫ぶ。
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その瞬間。
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「あっ」
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また声が重なった。
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「ほら!」
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「また一緒!」
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「やっぱ付き合ってる!」
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「だから違ぇよ!!」
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海人は頭を抱える。
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茉白も恥ずかしそうに顔を隠す。
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「もう知らない!」
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昼休みが終わるまで、
教室はその話で大盛り上がりだった。
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放課後。
いつもの帰り道。
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しばらく無言。
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「……」
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「……」
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先に口を開いたのは茉白だった。
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「今日……びっくりしたね」
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「……だな」
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海人は前を向いたまま答える。
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「付き合ってるなんて」
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「言われるとは思わなかった」
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「……あいつら」
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海人はため息をつく。
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「勝手なこと言いやがって」
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「ふふっ」
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茉白が少し笑う。
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「でも」
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「?」
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「わたしたち、付き合ってないもんね」
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海人は少し照れながら答える。
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「……当たり前だ」
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「うん」
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また静かになる。
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でも。
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海人は心の中で思う。
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(……なんであんな焦ったんだ)
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(付き合ってねぇのに)
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顔が少し熱い。
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茉白も歩きながら考えていた。
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(なんであんなに恥ずかしかったんだろ)
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(本当に違うのに)
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胸が少しだけドキドキする。
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二人とも、
まだその気持ちの名前を知らない。
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春の風が吹き抜ける。
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その日からしばらく、
クラスでは二人のことをからかう声が絶えなかった。




