シロツメクサの約束
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放課後。
いつもの帰り道。
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「海くん」
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「なに」
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「ちょっと寄り道しよ」
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「……またか」
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そう言いながらも、
海人は茉白の後についていく。
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歩いていくと、
土手のそばに白い花が広がっていた。
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「見て!」
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茉白が嬉しそうに駆け寄る。
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「シロツメクサ!」
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一面に咲く白い花。
春の風に揺れている。
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海人もゆっくり近づく。
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「……いっぱいだな」
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「覚えてる?」
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茉白が振り向く。
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「前にここで、花の指輪作ってくれたよね」
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海人は少しだけ目を丸くする。
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「……ああ」
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「あの時ね」
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茉白は笑いながらしゃがみ込む。
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「すっごく嬉しかった」
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「まだ覚えてる」
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海人は照れくさそうに頭をかく。
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「そんな昔のこと」
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「昔じゃないよ」
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茉白は一本のシロツメクサを摘んだ。
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「大事な思い出だもん」
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その言葉に、
海人は何も返せなかった。
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風が吹く。
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白い花が、
ゆらゆらと揺れる。
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「今年も咲いたね」
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「だな」
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「来年も咲くかな」
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「咲くだろ」
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「じゃあ」
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茉白は海人を見る。
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「来年も見に来ようよ」
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海人は少しだけ驚く。
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「……来年?」
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「うん」
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「また二人で」
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まっすぐな笑顔。
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海人は少しだけ照れながら、
視線を花へ向ける。
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「……暇だったらな」
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「それ、来るってことでしょ?」
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「違う」
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「絶対そうだよ」
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茉白が笑う。
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海人も少しだけ笑ってしまう。
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「……しょうがねぇな」
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小さくしゃがみ込み、
シロツメクサを一本摘む。
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「ほら」
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茉白へ差し出す。
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「え?」
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「約束」
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ぶっきらぼうな一言。
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茉白は少し目を丸くしたあと、
嬉しそうに受け取る。
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「ありがとう」
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摘んだシロツメクサを、
大事そうに胸の前で持つ。
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「約束だからね」
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「……ああ」
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短い返事。
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でも、
二人とも笑っていた。
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夕日が少しずつ傾いていく。
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白いシロツメクサは、
春の風に揺れ続けていた。
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来年も。
その次の年も。
ずっと一緒に見られると、
二人は当たり前のように信じていた。
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まだ誰も知らない。
この何気ない約束が、
二人にとって忘れられない大切な思い出になることを。




