雨宿りの回
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放課後。
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「じゃあねー!」
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友達と別れ、
海人と茉白はいつもの帰り道を歩いていた。
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空は少し曇っている。
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「降りそうだね」
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「……かもな」
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その時。
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ぽつ。
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「……あ」
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小さな雨粒が落ちる。
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ぽつ、ぽつ。
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あっという間に雨が強くなる。
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「海くん!」
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「こっち!」
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二人は近くの公園の東屋へ駆け込んだ。
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「はぁ……」
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「危なかった」
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屋根をたたく雨音が響く。
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ザーッ。
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校庭も道路も、
少しずつ雨に濡れていく。
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「結構降ってきたね」
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「だな」
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二人は並んで外を眺める。
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しばらく沈黙。
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でも、
気まずくはない。
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「海くん」
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「ん?」
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「雨、好き?」
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少し考える。
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「……普通」
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「また普通って言った」
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茉白がくすっと笑う。
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「じゃあ茉白は」
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「好き」
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即答だった。
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「なんで」
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「静かだから」
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雨音を聞きながら笑う。
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「こうしてると落ち着くの」
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海人も雨を見る。
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ザーッ。
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(……たしかに)
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悪くない。
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「海くんは?」
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「……」
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少しだけ考える。
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「今は」
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「?」
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「悪くねぇ」
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茉白は少し驚いて、
嬉しそうに笑った。
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「そっか」
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また沈黙。
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風が吹く。
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少しだけ冷たい。
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「さむっ」
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茉白が肩をすくめる。
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海人は自分の上着を見る。
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少し迷う。
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(風邪ひかれても困るし)
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「……ほら」
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上着を差し出す。
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「え?」
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「着とけ」
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「でも海くんが寒いよ」
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「俺は平気」
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ぶっきらぼう。
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茉白は少しだけ迷って、
上着を受け取る。
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「ありがとう」
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少しだけ大きな上着。
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袖が余ってしまう。
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「ふふっ」
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「なんだよ」
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「海くんの匂いする」
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一瞬。
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海人が固まる。
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「……は?」
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「洗剤の匂い」
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にこっと笑う。
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「安心する」
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(……そういうことか)
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少しだけ肩の力が抜ける。
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「びっくりさせんな」
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「?」
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「なんでもねぇ」
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またそれ。
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やがて雨は弱くなり、
空が少し明るくなる。
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「帰れそうだね」
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「だな」
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茉白は上着をたたんで返した。
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「ありがとう」
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「……おう」
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二人はまた並んで歩き始める。
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水たまりを避けながら、
ゆっくり帰る。
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「また雨降るかな」
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「どうだろ」
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「また雨宿りしてもいいね」
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その一言に、
海人は少しだけ笑った。
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「……雨じゃなくてもいいだろ」
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「え?」
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「いや」
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言いかけてやめる。
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(……一緒なら)
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その続きは、
胸の中だけにしまった。
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雨上がりの空には、
薄く虹がかかり始めていた。




