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存在




秋の終わり頃。


冷たい風が増えて、保育園へ向かう子どもたちも少し厚着になっていた。


朝の教室。


窓の外を見ながら、茉白は小さく手をこすっていた。


「さむ……」


指先が冷たい。


すると後ろから、


「茉白、今日なんか丸くね?」


と声がした。


振り向くと海人。


茉白はむっとする。


「服が厚いだけ」


今日は少し大きめの上着を着ていた。


海人は「ふーん」と言いながら、袖を引っ張る。


「もちもちしてそう」


「しない」


「するだろ」


「しないって」


少しだけ言い合いになる。


でも、その空気は前みたいに刺々しくない。



その時。


先生が入ってくる。


「今日はお外寒いから、みんなちゃんと上着着てねー」


「はーい!」


子どもたちが元気よく返事をする。


海人はもう外へ行く気満々でそわそわしていた。


茉白はその様子を見て、少し呆れる。


(ほんと元気……)



園庭。


吐く息が少し白い。


子どもたちは走り回っているけど、茉白は滑り台の近くに座って空を見ていた。


空気が冷たくて、空が高い。


静かな感じがなんとなく好きだった。


その時。


「なにしてんの」


隣に海人が座る。


珍しく走ってない。


「空見てた」


「空?」


海人も上を見上げる。


しばらく沈黙。


風の音だけが聞こえる。



「……ほんとだ」


海人がぽつりと言う。


「なにが」


「空、高い」


茉白は少しだけ目を丸くする。


海人がそんなこと言うと思わなかった。


「でしょ」


少し嬉しそうに返す。


海人はまた空を見る。


「でも寒い」


「それはそう」


「夏の方がいい」


「わたしは秋好き」


「なんで?」


「静かだから」


海人は「ふーん」と呟く。


正直、まだよくわかってない。


でも——


茉白が好きって言うなら、なんとなく悪くない気がした。



遠くから友達が叫ぶ。


「海人ー!鬼ごっこやるぞー!」


「あ!」


一瞬でいつもの顔になる。


立ち上がった海人は、走り出そうとして——


少しだけ振り返る。


「茉白も来る?」


茉白は少し考えて、


「……あとで」


と答える。


海人は「わかった!」と笑って走っていく。



茉白はその背中を見る。


前までは、“うるさいやつ”だった。


でも今は。


海人が笑ってると、なんとなく安心する。


近くにいるのが、自然になってきている。



そして海人も。


鬼ごっこをしながら、時々滑り台の方を見る。


まだそこに座っている茉白を見つけると、


なんだか少しだけ安心した。

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