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帰路の途中、人形はずっと静かだった。除霊されたのだろうか、それならいいのだが。自室に戻るとメイドが紅茶と焼き菓子を持ってくる。知らない人にそばにいられるのも気になるので、用があれば呼ぶと言って下がってもらった。焼き菓子、マドレーヌがめちゃうまだったからまた後で呼ぶ。
『わたくし…あのお二人にあんなにまで嫌われておりましたのね…』
人形がなんか言っているけど、返事をしたほうがいいんだろうか。しかし独り言かもしれないし、ちょっとそっとしておこうか。
『あの二人は幼馴染ですの』
説明をしだした。これは自分に話しかけている。
「そうですか…キャラ立ちしてましたね」
当たり障りがないことを言ってはみたが、あまり興味はない。自分がこのゲームをプレイしてもあの二人は攻略しないだろう。
『昔はみんなで仲が良くて…いつからこんな風になってしまったのかしら』
「え、心当たりないです?」
どう考えたってこのお嬢さんが悪役ぶりを発揮しだしてから雰囲気が悪くなっているのだが。
しかし、ちょっと考える。
擬人化フラランちゃんはきっと人たらしだ。これは間違いない。悪役令嬢にまで手を差し伸べる女神っぷりなのだから、いくらイケメンとはいえその光属性アタックを食らい続ければフラランちゃんに惹かれていくのは無理もないだろう。レツモンのフラランちゃんが覚える技にちなんで「ピカピカパワー」と呼ぶことにしよう。ピカピカパワーは闇属性に有効なので悪役令嬢のHPをゴリゴリ削っていたことだろう。
幼馴染の間に可愛い女の子が途中から入ってきて人間関係に変化が生じた。要は思春期になって色気づいたということだ。まあ、健全ではないだろうか。
フラランちゃんがピカピカパワー持ちだったがために幼馴染のメンズ全員がフララン推しになったのだろう。このお嬢様なら心底つまらなかったに違いない。しかし、青春と言えば青春だ。こんな少女漫画みたいな学校生活は送ったことがないので眩しくもある。
自分の学生時代を思い出してみるが、高校時代はRPGゲームの「ルナティック・サーガ」、略してルナサガばかりやっていた。アニメショップの掲示板でルナサガファンの友達を見つけ、学校も年齢も関係なく集まってはルナサガの話ばかりをしていた。いい思い出である。
人形は黙りこくっている。仲良しの幼馴染に殊勝な態度を取った後も何のフォローもしてもらえなかったのが相当堪えたらしい。ここで私がフォローをする義理もないし、一晩くらいは今までの態度を反省してもいいと思う。
「ええっと…普通は我儘すぎる人って嫌われますよ」
余計なお世話かとも思うがつい言ってしまった。これ以上はさすがに何も言うまい。今後気を付けるべきことは人形になったのだから特にないとも思う。
その日人形は夕飯の時も連れていけと金切り声を上げることなく大人しくしていた。




