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ここは病院の一室である。暇で暇で仕方ないと思っていたら来客があった。
「レツバさん~!よくぞ生きてた~!!」
レツバさんとは「レツモン大好きおばさん」の略だ。SNSのハンドルネームである。
「まりまりさん、ご心配かけてすまぬ…」
「呟かないどころか、レツモンのプレゼント交換も一切動かなくなったから何かあったとは思ったけど、死んでなくてよかった~!」
レツモンはフレンドになったユーザーと、ゲーム内のアイテムを一日一回プレゼントしあうことができる。それをすることで友好度を上げるのだ。
レツモンは位置情報ゲームであるので歩きながらプレイをするのだが、どうも私はその最中に土手から転げ落ちて救急車で運ばれたらしい。怪我は掠り傷程度だが、三日間眠りっぱなしなので入院を余儀なくされた。レツモンを三日もプレイしなかったのは初めてのことである。
起きてからとりあえず連絡が来ていた人に返信をしたら、近所のフォロワーであるまりまりさんが今日の今日で来てくれた。ありがたい存在である。
「夢で悪役令嬢に転生した」
そう言うとまりまりさんはブフォっと笑う。
「レツバさんラノベ読みましたっけ?」
「いや全然。たぶん七輪さんの影響」
七輪さんはラノベにドはまりしている共通のフォロワーだ。悪役令嬢とか異世界転生のことを呟くと速攻でリプライがくる。
ラノベは嗜んでいなかったが夢は結構面白かった。最後は改心したお嬢様が元に戻ってめでたしではないだろうか。私はハピエンが好きだ。というか、ハピエンしか見ない。だけどどうせだったら生の妖精も見たかった。
「夢の中で何が一番良かったですか?」
「三段腹じゃなくなったところ」
まりまりさんはゲハゲハ笑う。
「ここでレツモンはできないんですよね」
「さっきログインしたけどモンスターが全然出ない…」
病院の敷地内はモンスターが出現しないように制限が掛かっているのだろう。
だけど明日は退院だ。三日間を取り戻さなくては。
「そうだ、レツバさん不在の間にレツモンカフェの新メニューが出たんですよ」
まりまりさんはそう言うと、スマホでレツモンカフェの公式サイトを開いて見せてくれた。
「んあ~~~~!フラランのピカピカプリンパフェ~~~!!」
「めっちゃ可愛いですよね~!!」
「まりまりさんいつ行けます?予約、予約しちゃおう」
「行きましょう!」
二人が行ける一番近い日程で予約を入れる。舞踏会にはドレスが必要だ。この日はやはりレツモンとアパレルメーカーがコラボしたTシャツを着ていくべきだろう。今からワクワクが止まらない。
ファンタジーの世界もなかなか楽しかったが、私はやっぱりレツモンがあるこの世界がいい。三段腹でも、成人式より定年の方が近いおばさんでも。
フラランのピカピカプリンパフェ、とっても楽しみだな。
END
お楽しみいただけましたら嬉しいです。




