笑う蠍に、食う大蛇。
……っと、だんだん慣れてきたな……。
アイツ、しつこい割りに単純だ……俺と同じ、馬鹿だな。
「はぁーっはっはっは! だが勝筋は見えたぜっ!」
ふっふっふっふっふ……あの飛行機の命も後数びょ……?
「……おいおいおいおいおいっ!」
あ、あの飛行機……っ!
「ああ、クソ! そっちに行くかよ!」
さて、どうする……あのお嬢ちゃんは、俺より遅い……助ける……べきだよなぁ!
「待て待て待て、待てやごるぁぁぁ!」
これだけは、どうにかして防ぐ!
―――★―――
「っ! うっそ!?」
機銃がリサに向けられ、凄まじい勢いで襲い掛かる。
リサ自身が持つITEMでの身体強化で、常人の8倍の身体能力を得ている。
しかし、それでも後ろに張り付いてくる戦闘機……ゼロ戦の機銃からの回避は難しい。
「っく!」
だからこそ、近くの木を盾にして、ゼロ戦からの視認を困難にさせる。
「……まいった、な……」
しかし、それは走り続けられるのが前提。
8倍の体力は、無限ではない。勿論、その回復力も。
「っきゃ……!」
掠る、銃弾が偶々彼女の近くを通過しただけだが、彼女は最悪を想定する。
「追いついて、来ている」
勿論、元から速度では負けていた。だからこそ小回りと木の盾を使っていた。
……しかし、その2つを用いても、既にかなり彼女は減速している。
だからこそ、ゼロ戦に補足される。
「―――無視すんなやおっらぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「っ!?」
飛び出したのは、ティアゴだった。
……体から黄色い光を帯び、一直線に飛んでいく。
「―――行くぜぇぇぇ! 舞い歌う雷ォォォッッ!!」
(……何とか、電磁石の要領で、うまく着地できたな……寒)
右側の主翼に着地し、そのままITEMの能力で磁力を発生し、直立する。
舞い歌う雷……能力は電気の発生、操作。
雷はティアゴの内側から発電し、身体能力の強化もそれの応用だ。
「さてさて……このフロントガラスでも壊せば……おおぉ!?」
急激に、重力が反転する。
……いや、反転したのはゼロ戦とそれにくっ付いていたティアゴだが。
「まっ!?」
リサを撃ち殺す為、低空飛行していたゼロ戦が反転する事で、枝や葉がティアゴにぶつかる。
「いててててててててっ! 痛い痛い痛い!」
擦り傷や切り傷ができ、消耗していく。
「死ねおらぁぁぁっっ!!」
流石に堪忍袋の緒が切れたのか、足場にしていた右側の主翼に強化された身体能力で大穴を開ける。
「ざまみろばかっ!」
そう、若干負け惜しみ気味に叫び、逃げる様に主翼から飛び降りる。
―――★―――
「クソ、クソ、クソ、クソクソクソ!!」
あ、あの馬鹿……まさか、拳骨一つで俺の帝國ノ翼の主翼に……。
どうする、このままでは……落ちる……。
「負けるのか……死ぬのか……? 俺は……また……?」
ふざけるな、ふざけるな、ふざけるなふざけるな!
俺は……俺は……俺は、俺は、俺は俺はっ!
死ねるかよ! お前らを殺さないうちにぃぃっっ!!!」
手を貸せ……俺に、手を貸せよ! 帝國ノ翼!
―――★―――
「……あるとは思っていたが……離脱装置か……」
パラシュート……しかも、かなり風に流されている……追うのは、やめておこう。
それに、今回の痛手は少ない。
リサも、三枚張り……8倍で凌いでくれた。
底は、うまく隠せた。
……それに、だ。
「まずは、これからどうするか……だな」
「う、うん……とりあえず、2人を迎えに行こう」
この嘘つきの本性を知れた……大きな収穫だな。
―――★―――
「はぁ……はぁ……っ!」
あぶな、かった……。
「く、っそぉ!」
あの、鬼畜米英ども……後で、必ず……殺す!
「―――厄介なんだよねぇ、君みたいなITEMのタイプ……執着が強いのか、全然奪えるタイプがなくてさ」
「っ!?」
な……女の声!?
「どこにいる!」
「んー? ……ああ、『七色の大罪』発動中だったっけ、テヘッ☆」
……声はする……だが、見えない……透明になるITEMか……?
もしくは、声だけを届ける能力の可能性もある……。
……とにかく、帝國ノ翼はしばらくは使えない。
しばらく発動しない期間が必要だ……なら、どう切り抜ける。
もし、透明になるだけなら……初撃をもらう可能性はあるが……確実に反撃できる。
「……来るなら来い!」
「おや? 結構好戦的だ、意外だなぁ……ああ、やっぱり日本のエアファイターって元々こんな感じなのかな?」
気持ちの悪い笑い声が、周りに木霊する。
「それなら、遠慮なく……」
……その気味悪いニヤケ面に、確実に拳を叩き込んでやる。
「―――金蠍銀蛇、白く淡く……おまけだ、無識界」
―――その瞬間、辺りが混沌と化す。
「ッな!?」
馬鹿な……1人につき1つじゃ……!?
「うふふ、奪ったんだよ? 殺してさ……それじゃあ、せいぜい奇妙にあがいてネン☆」
ふざけるな、ふざけるな!
「てめぇ! 殺―――」
「うるさいよ、雑魚」
―――地面に出現した、巨大な顎に……男は、なす術もなく噛み砕かれていく。
「んー……終わりっと……これで、10日かぁ……先は長いなぁ……最近、ITEMを落とす人も少ないしね」
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