触れられざる、その棺桶。
「…………あの飛行士、やられちゃった」
まぁ、あの二人にやられるくらいだしなぁ……。
「なるほど……それで、セカ……エリナさん……ITEMはどうしました?」
…………うーん。
「落さなかったみたい、やっぱり死因と違ってお気に入りは落とさないっぽいね」
「ふむ……しかし、彼の場合は難しいですね……さて、ではどうします?」
……うへぇ、めんどくさ。
堕天矢使いたくなる面倒くささだ。
「3rdはサッサと1stの所に戻って良いよ、1人で帰るし」
「それはできません」
だよねー。面倒くさいなぁ。
「……じゃあ、帰ろうか」
「ええ……それで、1st様はどうやって彼女を仲間に誘う気でしょうね」
「さぁ? 君の方が知ってるんじゃないの? 直接受けたのは君らじゃん」
そもそも私アイツ嫌いだし。
……結構すごいことだよ、私が嫌うだなんて。
「まあ、彼……私たちの仲間には成れなかったけど……良い当て馬にはなってくれたね」
「ええ、おっしゃる通りです」
皮肉も解らない馬鹿。
何もかも嫌になるね……はぁ……また会いたいなぁ、リサちゃん……。
―――★―――
時間は初日の夕方に遡る。
「……おや、これが件の……どうにか節約したら、3日は持つかな?」
リサとの『パン悔い狂騒』に引き分けたエリナ・エッフェンベルグは、手元にあった袋を覗き微笑む。
「っま、種は蒔けた、伏線も引いた……後はどう利用するかだねぇ」
コンビニ袋じみたパンの入った袋をクルクル回しながら、森を進む。
……木が抜け開けた場所に、人影を発見する。
真っ黒な髪で少し長め、白いワイシャツに暗めのジーンズ。
(……ふむむ……隙だらけだぞぅ)
そう判断すると、弓を番え狙いを定める。
「おい、無駄だぞ」
背後を取っているはずのエリナに、男は見透かしているかの様に話しかける。
「っ!」
男の一声に、エリナは一瞬身を震わせる。
(……おっと、これは……あのステルス女と同じくらいかも知れないぞぅ……)
「出てこい、そこじゃあ戦い辛いだろう」
一瞬思案し、木の背後から出ていく。
「あっはっはー、怖い顔しないでよー、スマイルスマーイル」
「……っち、最初がお前の様な馬鹿女とはな……」
服の胸の辺りから、なにかを取り出すような動きをする。
「それで? 何の用だ?」
頭を掻きながら、エリナに尋ねる。
「んー? べつにぃ? ほら、殺し合いでも協力し合いでも、お好きな方をどうぞ」
緊張感のまったくない声に、小さい舌打ちが聞こえる。
「……まあ、話しだけは聞いてやる……それで、まず名乗れ」
「ふむふむ、私に興味津々だネ! 性はエッフェンベルグ、名はエリナ! あなたのハートを射殺す女よ!」
「ああ、そうか……綴りは?」
喧しい挨拶に、冷淡な質問で返す。
(おやおや、このままじゃあ私が馬鹿女みたいじゃないか……この理性マンめぇ、隙なんて誘わずにブスッと行っちゃおうかな?)
内心物騒な事を言いながら、綴りを伝える。
「んで、エリナはElenaね、E・l・e・n・a!」
「ああ分かった……もう黙れ」
「…………っ!?」
途端、エリナの口が勢いよく閉じる。
「……墓碑銘・葬列……覚えておけよ、他人の意思を操れるITEMもある」
そう言って、エリナの名が書かれた単語帖を取り出し、漸く振り返る。
「――――ッ!?」
今度は、その男が驚愕の顔をする。
―――★―――
堕天矢と言うITEMがある。
所持者はエリナ・エッフェンベルグ。弓の形であるが種別は射出型……つまり、効果が及ぶのは主に矢である。
しかし、若干ながら弓にも微弱な矢とは別に効果がある。
光の矢を生成する以外に、もう一つだけ……。
―――★―――
「……美しい……」
「は? え?」
先程までの冷静な態度は消えた。
ただただ、年相応の反応を見せる。
「……エリナ……俺は……いや、僕は……君が好きです!」
「う、お、え……えぇ……」
奇しくも、先程とは表情が入れ替わる。
苦々しい顔と、嫌味なほど爽やかな笑顔。
「この戦い! 二人で勝ち残ろう!」
動けないエレナの手を、強く握りしめる。
―――白 宝玉
―――18歳、男性
―――ITEM:墓碑銘・葬列 死因:轢死
「………………」
青ざめた顔で、若干手を震わせる。
(なんだ、こりゃ)
遠い目で、自分の手を握り続ける男……バオシィを見つめる。
―――★―――
堕天矢と言うITEMがある。
命令を光の矢に込め、生物に対し命令を実行させる能力を持つ。精神操作系のITEM。
意思を光の矢に変える機能だけではなく、この弓を見つめた者を魅了する効果を持つ。
「だなんて、まっっったく説明書には書いてないんだけどねーー!」
ははは、あーんな弱い魅了に引っかかっちゃったかー。こりゃ想定外!
「トライアンドエラーの精神で行くつもりだけど……こりゃあ、悪戯が過ぎたね!」
こうなると……他のITEMの悪戯も最悪……たはーっ、考えたくない!
余計な茶々は入れるもんじゃあないね! みんなゴミン!
「さてさてさぁて? こうなると他の参加者の動向も見てみなきゃなぁ……あーっ! 面倒くさぁぁぁぁい!
自業自得なんだけどねーーーー!
.




