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後悔しているから、僕は全部殺す。  作者: 鬼羅
4日目、中央戦線。
28/39

黄金の太陽、黒の嵐に阻まれて。





「やぁ、やぁ」


「実は僕は、質問さえしてくれれば快く答える人物、ってのは、周知じゃない事実なんだ」


「……で、だ……」

「さっさと質問に答えるとしよう、君もそうして欲しそうだしね」


「答えはイエスだ」

「主人格が殺されても、その時本物のITEMを分身の誰かが持っていれば良い」


「もちろん、キルスコアは受け継ぐよ?」

「その方が面白そうだろう……?」


「ああ、でも」

「現在の主人格が他人に殺されたら、君らはアウトだから、その辺、気をつけてね?」




―――★―――




……まるでサングラス越しかのように黒く染まった視界の中、全方位を見ながら嗤う。


(いいねぇ、いいねぇぇ! 最高だぁぁ!!)


彼は自分の腕を振るいながら、敵を倒そうとせんとする。

先ほどからいくつかの武器が彼の胴体へ放たれるが、まったくダメージを感じさせない動きを見せ続ける。


(ひひはははははは! いこうぜぇ! ライラァァ!!)


既に自分が殺した者の名を呼びながら、ゲームフィールドの中心で嗤いながら戦い続ける。


……黒い視界の中で、ふとおかしなものが目に入る。

小さな竜巻と、どこか見覚えのある少女。


(あぁ……? ライラかよ……へへへ! めでてぇなぁぁ! お得な女だよ、ラァイラァァァ!!)


歓喜しながら、さらに敵を攻撃し続ける。




―――★―――




「むにゃ……うー……ん?」

「お早、カリンちゃん」


……熱くない?


「さてカリンちゃん」

「ほぁ?」

「ライラちゃんに暴力的な拷問を行った結果、大変重要なことがわかりました」


……はぁ!?

え、は、えぇ!?

ごごご、拷問!?


「大丈夫!? 何されたの!? 怪我はない!?」

「え、ああ……一応」


わー……ひっどーい。

ひどいんだー、ユエちゃん……。


「そんな事より、ライラちゃんは実は私達を嵌めていました」

「えぇッ!?」

「真ん中に人を集めて殺し合いをさせようとしていたんだって」

「えええ!?」


しょ、衝撃の真実……。

ここここ、怖いなぁ……身近な人が裏切るなんて……。

嫌だなぁ……そう言うの……。

…………熱……。

熱ッ!?


「ああああ!? 熱いあづいあづい゛い゛!?」

「うわッ!? お、落ち着いてカリンちゃん!」


熱い熱い熱い熱い!?

い、いいい、いきなり、な、ななな、なんだぁ!?

あつ、あづ、あちちちち!?


……お、落ち着け……深呼吸だ……熱い……。

吸ってー……吐いてー……熱い、吸ってー……ふぅ。


「……大丈夫?」

「うん……それで、これからどうするの?」

「……やっぱり行こう……行き、たいな……」

「わかった、行こっか」


稼いでおきたいしね……。

頑張るぞー!


「……ライラちゃん、次やったらマジでITEM全開で殺すからね、あんな拷問より酷い目にあわせるからね」

「は、はぁい……」




―――★―――




木の葉の間から敵を見上げながら、後ろを見る。

「で、お前たちはどうするんだ?」

「勿論お手伝いするわー、リーダーのお友達でしょ?」

にこやかに笑いながら、トーキと同じように見上げる。


「……ブンブン飛んでうぜぇなぁぁ…………」

不機嫌そうな顔で、ザンが木陰から出て行こうとする。

「足ふん捕まえて叩きつけてやる……」

「ま、待った待った!」

とりあえず木陰に引っ込めるためにリサが袖を引く。


「離せ……」

「駄目だってば……ちょ、まじで……袖引き千切るよ……っ」

「離せやぁぁ……」


引っ張り合いをする二人を尻目に、マリアとトーキは話し合う。

「どうする?」

「……執拗に狙ってきているからな……倒すしかないだろう」


しかし、と言いトーキは困った顔をする。

「……なあ、ザン、だったか? あいつのITEMは……」

「ん? まあざっくり言うとフィジカルの強化かな」

その言葉に、更に困った顔をする。


「あの二人に頑張ってもらうしかない」




―――★―――




岩の陰から、コソコソと確認する。

「……あの黒いドロドロは期待できそうだな!」

目を輝かせながら、ジャックは振り返る。


「アン、周りに気配は?」

「んー? ないよぉ、ジャッ君」

そうか、と満足気に笑う。


「一人二人殺してかね?」

「……私はジャッ君と違ってヘナチョコだからヤダ」

アントニアは素気無く断る。

肩をすくめ、ジャックも大きな岩から離れる。


「そいじゃ、もうちっと待つか」

「だねー、情報はゲットしておきたいしね」

その肯定に、ジャックはパアっと笑顔になる。


「だよなぁ! 俺って頭よくね!?」

「うん、まあ回転は速いよね、ジャッ君は……じゃあ、のんびりしようか」

アントニアも、周囲を警戒しつつ中心を見つめる。




―――★―――




砂漠は基本的に開けており、直ぐに周りの異変に気がつく。

……つまり、砂漠のエリアと他のエリアの境目と、渦中の戦場である。


「皆、頭を下げて……ばれちゃう」

「……は、はい」

「ほーい……砂も熱いね」


ライラとカリンにそう命じながら、ユエは波打つようにデコボコな砂地に体を隠す。

そのまま、丸見えな砂漠から遮蔽物の多い森へと歩く。

ザクザクと、三人の足音が鳴り続ける。


「っと、そうだ……ここから一応仕掛けておくか」

そう言い、ユエは長袖を捲くり砂に手首まで埋める。

「『極蝕色祭(ツァイホン)』……ッッ!」


ドクンと、周りの砂が同心円状に波打ち、そのまま収まっていく。

「よし、進もうか」

「はーい」

「はい……」


サクサクと、三人は歩いていく。

「ねえ、熱くない?」




―――★―――




「つまりだ、一人を肩に乗せて跳んで、上の奴が下の一人を蹴ってあの女を捕まえる」


その提案に、マリアは困った笑みを浮かべる。

「……じゃあ、どっちが行くの?」

「俺が上だ、早くしろや」

ザンがそう言いながら、リサに引っ張られ続ける。

「この女の方がどうにも、馬鹿力だからな……」

「なんで方針が決まったのに前に行こうとするのー……」


「……良いのか? あの竜巻飛礫とナイフの飛び交う中に突っ込むんだぞ……」

「関係ねぇよサル」

カチンときながらも、トーキは続ける。

「まあとにかく、二段ロケットだ、埒外の二人の夢の技術だ」

「君、怒ると訳分からない事言うの?」


咳払いし、話しを変える。


「気をつけろよ、リサ」

「うん……大丈夫だよ、トーキ」




―――★―――




上空から石やナイフを射出し続けながら、木の上から二人を探し続ける。

「見えねえ、なぁ、ぁぁ……」

反響し続ける声で、ぶら下げてるライラに話しかける。

「そうだねぇ……コソコソ、虫みたぁい……くひひ」


容赦なく掃射を続けながら、周りを見渡す。

「あの黒いドロドロ、地面食べてる……」

「あ、ぁぁ……? おお、まじだ、ぁぁ……」

中心で暴れまわっている黒いスライムの下の地面は、堀のように抉られ、スライムは反比例して巨大化しつつある。


「流石に、あれは無理だなぁ、ぁぁ……」

「だねー、本物をささっと探して帰りたいねぇ」



「っどぉぉぉっりゃぁぁぁああああ!」



金色の物体が大声と共に跳び上がり、更に上にいた黒い物体が更に跳ぶ。


「うきゃぁ!?」

「う、おぉぉ、ぉぉッ!?」

「死ねぇぇ……落ちろコラァァ……ッ!」


枯れた声で、ザンはライラの足首を掴む。

「離、せッ! こッのぉぉ!」

骨を握り潰されながらも、決して手を離さずにITEMでの攻撃をザンに当て続ける。

背や頬にナイフが突き刺さり、容赦なく飛礫が上から浴びで続ける。


……だが、それでもザンは手を離さない。


「……ッチ……ライラ、ァァ……」

「な、に!?」

「ドロドロが来やがった……まずいまずい……」


「ガボボ、ゴボバァァァッッ!!」


周りの参加者を無視しながら、何故か真っ直ぐに黒いスライムは三人に向かい迫り来る。

その道の途中にいた不運な参加者が、また一人黒い液体に飲み込まれる。


「まずい、まずいまずい……」

「落ちろ、クソがぁ……ッ!」

「い、痛い痛い痛い痛い!」


空中で暴れる三人に、黒いスライムの触手が迫る。


「悪いな、ぁぁ……ライラ、ァァ……」

「……は?」


掴んでいた手とは違う、左手が現れる。

……そのまま、指輪を抜き取り、両手とも風となって消える。

「楽しかったぜ、ぇぇ……じゃあ、なぁぁ……」


「この、裏切りも―――」


横合いからの触手に、ライラは飲み込まれる。


「ぐ、ぁ……ッ!?」

ザンの左腕も、同じように飲み込まれ、全身が引きずり込まれかける。


「クソッ!」

肘を逆側に曲げへし折りさらに限界まで捩じり、すぐさまスライムを蹴り左腕を引き千切る。

そのまま頭から落下したところに、リサがザンの身体をキャッチする。


「大丈夫!?」

「……うるせぇ……喚くな、騒々しい……」

リサの腕から逃げるように這い出し、右腕からゆっくり地面に降りる。

「リンジィ……頼む……」


「う、うん!」

その言葉とともに、どこからか少女が現れる。

少女は手をかざすと、かすかに光り始める。


「いやいやいや! 悠長に治している暇ないよぉぉぉ!!」

リンジィとザンの手を取り逃げようとする。

「リンジィは俺がやる……絶対にはなさねぇ、から……」

鬼気迫るザンの意思を汲み取り、リンジィを抱きかかえたザンをさらに抱きかかえる。


「ガガガァァァァァァ! ゴブッ、ゴボァ、ガボァァァァ!!」


背後から黒いスライムが襲いかかる。

木をなぎ倒し、リサのすぐ後ろを追いかけてくる。

土や石、木を飲み込み肥大化し続ける。


「やばいやばい、これはやばいよぉぉぉ!!」




―――★―――




「……あの黒いのも来るとは……」

「そうねぇ、想定外だわ……」


木の陰に隠れていたトーキとマリアは心配そうに三人を見る。

リサは凄まじい速度で逃げてはいるが、障害物を関係なしに進み、且つ肥大化していく黒いスライムには分が悪い様に見えた。


「……どうしたものか」

「私は、ああいう化け物は苦手だわ……ITEMも効かなさそうだし……下水の臭いがするし」

「下水の臭いを……なんでもない」


言いかけた言葉を引っ込め、トーキは中央の方を見る。

……暴れていた黒いスライムが消えても、何人かは戦い続けている。

「あの竜巻……いつのまにか消えた」

「黒いドロドロのせいで、見失ったわねぇ……」


不安そうにマリアは辺りを見渡す。

「……あらぁ?」

「どうしたんだ」

「そう言えば、ライラちゃんはどこに行ったのかしら……?」

「は? ライラ?」




―――★―――




「っとぉ……あはは、危なかったぁ、流石にビビった」


冷や汗を掻きながら、地面に着地する。

黒いモッズコートをはためかせ、後ろを振り返る。


「流石に、追っては来ないか、あはは、いやぁ、焦った焦った」


先ほどの戦闘を思い出し、爽やかに笑う。


「……んで、なんでお前がいるんだよ……ライラよぉ」

「ひ、ひぃ……」


木を背にして怯えているライラに、その木を蹴りつける。

その衝撃で何枚かの葉が落ちる。


「ライラもどきか? そっくりさんか? 双子か?」

「ひゃ、ひぃぃ……」

「……本物じゃあねえか、まあ、恨みはねぇがよ、ケジメだ」


そう言い、手をライラに差し出す。


「こ、この子だよ……マリア達に助けを求めたの」


「あん?」


ふと視線を横にずらすと、不健康そうな男がこちらを指差していた。

……後ろにはハンチング帽の男と、奇妙な服装の男。

正確に言えば、ライラを指差していた。


「どちらさんだ?」

「ヨシヤって言います」

「僕はピーター」

「キューシローです」

「自己紹介かよ、ははは、面白い奴等だな」


モッズコートの男は足を下ろし、手をポケットに突っ込む。

ニヤニヤと笑いながら、三人の様子を抜け目なく観察する。

(ハンチング、手はフリー……装飾品の類は無し……)

ニヤつきながら、半歩後ろに下がる。

(サムライ、手はフリーだが腰にカタナ……)

さらに一歩、距離をとる。

(ナード、手はフリーだが……頭のアレは何だ?)

三人を観察し終わり、さらに口元を歪める。


「『DISASTER(黒嵐)』ッッ!!」


その掛け声と同時に、モッズコートから手を抜き三人に向ける。

両手が二つの竜巻となり、三人を襲う。


「『日緋色金(Sunlight)


ほぼ同時にキューシローが刀を抜き、一瞬の内に男の懐へと踏み込んでいた。

「あ、ぁぁ……!?」

「はぁぁぁ!」

「ぐわぁぁぁぁぁ、ぁぁ……!!」

刀を振り抜き、胴体を断ち切る。

「やぁ、らぁ、れぇ、たぁ……!」

そのまま、男はモッズコートごと上下に二つに断ち切られる。


「な、ぁぁ……わけねぇだろばぁぁぁぁっか!!」


「なぁッ!?」

暴風が、キューシローを襲う。





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