黄金の太陽、黒の嵐に阻まれて。
「やぁ、やぁ」
「実は僕は、質問さえしてくれれば快く答える人物、ってのは、周知じゃない事実なんだ」
「……で、だ……」
「さっさと質問に答えるとしよう、君もそうして欲しそうだしね」
「答えはイエスだ」
「主人格が殺されても、その時本物のITEMを分身の誰かが持っていれば良い」
「もちろん、キルスコアは受け継ぐよ?」
「その方が面白そうだろう……?」
「ああ、でも」
「現在の主人格が他人に殺されたら、君らはアウトだから、その辺、気をつけてね?」
―――★―――
……まるでサングラス越しかのように黒く染まった視界の中、全方位を見ながら嗤う。
(いいねぇ、いいねぇぇ! 最高だぁぁ!!)
彼は自分の腕を振るいながら、敵を倒そうとせんとする。
先ほどからいくつかの武器が彼の胴体へ放たれるが、まったくダメージを感じさせない動きを見せ続ける。
(ひひはははははは! いこうぜぇ! ライラァァ!!)
既に自分が殺した者の名を呼びながら、ゲームフィールドの中心で嗤いながら戦い続ける。
……黒い視界の中で、ふとおかしなものが目に入る。
小さな竜巻と、どこか見覚えのある少女。
(あぁ……? ライラかよ……へへへ! めでてぇなぁぁ! お得な女だよ、ラァイラァァァ!!)
歓喜しながら、さらに敵を攻撃し続ける。
―――★―――
「むにゃ……うー……ん?」
「お早、カリンちゃん」
……熱くない?
「さてカリンちゃん」
「ほぁ?」
「ライラちゃんに暴力的な拷問を行った結果、大変重要なことがわかりました」
……はぁ!?
え、は、えぇ!?
ごごご、拷問!?
「大丈夫!? 何されたの!? 怪我はない!?」
「え、ああ……一応」
わー……ひっどーい。
ひどいんだー、ユエちゃん……。
「そんな事より、ライラちゃんは実は私達を嵌めていました」
「えぇッ!?」
「真ん中に人を集めて殺し合いをさせようとしていたんだって」
「えええ!?」
しょ、衝撃の真実……。
ここここ、怖いなぁ……身近な人が裏切るなんて……。
嫌だなぁ……そう言うの……。
…………熱……。
熱ッ!?
「ああああ!? 熱いあづいあづい゛い゛!?」
「うわッ!? お、落ち着いてカリンちゃん!」
熱い熱い熱い熱い!?
い、いいい、いきなり、な、ななな、なんだぁ!?
あつ、あづ、あちちちち!?
……お、落ち着け……深呼吸だ……熱い……。
吸ってー……吐いてー……熱い、吸ってー……ふぅ。
「……大丈夫?」
「うん……それで、これからどうするの?」
「……やっぱり行こう……行き、たいな……」
「わかった、行こっか」
稼いでおきたいしね……。
頑張るぞー!
「……ライラちゃん、次やったらマジでITEM全開で殺すからね、あんな拷問より酷い目にあわせるからね」
「は、はぁい……」
―――★―――
木の葉の間から敵を見上げながら、後ろを見る。
「で、お前たちはどうするんだ?」
「勿論お手伝いするわー、リーダーのお友達でしょ?」
にこやかに笑いながら、トーキと同じように見上げる。
「……ブンブン飛んでうぜぇなぁぁ…………」
不機嫌そうな顔で、ザンが木陰から出て行こうとする。
「足ふん捕まえて叩きつけてやる……」
「ま、待った待った!」
とりあえず木陰に引っ込めるためにリサが袖を引く。
「離せ……」
「駄目だってば……ちょ、まじで……袖引き千切るよ……っ」
「離せやぁぁ……」
引っ張り合いをする二人を尻目に、マリアとトーキは話し合う。
「どうする?」
「……執拗に狙ってきているからな……倒すしかないだろう」
しかし、と言いトーキは困った顔をする。
「……なあ、ザン、だったか? あいつのITEMは……」
「ん? まあざっくり言うとフィジカルの強化かな」
その言葉に、更に困った顔をする。
「あの二人に頑張ってもらうしかない」
―――★―――
岩の陰から、コソコソと確認する。
「……あの黒いドロドロは期待できそうだな!」
目を輝かせながら、ジャックは振り返る。
「アン、周りに気配は?」
「んー? ないよぉ、ジャッ君」
そうか、と満足気に笑う。
「一人二人殺してかね?」
「……私はジャッ君と違ってヘナチョコだからヤダ」
アントニアは素気無く断る。
肩をすくめ、ジャックも大きな岩から離れる。
「そいじゃ、もうちっと待つか」
「だねー、情報はゲットしておきたいしね」
その肯定に、ジャックはパアっと笑顔になる。
「だよなぁ! 俺って頭よくね!?」
「うん、まあ回転は速いよね、ジャッ君は……じゃあ、のんびりしようか」
アントニアも、周囲を警戒しつつ中心を見つめる。
―――★―――
砂漠は基本的に開けており、直ぐに周りの異変に気がつく。
……つまり、砂漠のエリアと他のエリアの境目と、渦中の戦場である。
「皆、頭を下げて……ばれちゃう」
「……は、はい」
「ほーい……砂も熱いね」
ライラとカリンにそう命じながら、ユエは波打つようにデコボコな砂地に体を隠す。
そのまま、丸見えな砂漠から遮蔽物の多い森へと歩く。
ザクザクと、三人の足音が鳴り続ける。
「っと、そうだ……ここから一応仕掛けておくか」
そう言い、ユエは長袖を捲くり砂に手首まで埋める。
「『極蝕色祭』……ッッ!」
ドクンと、周りの砂が同心円状に波打ち、そのまま収まっていく。
「よし、進もうか」
「はーい」
「はい……」
サクサクと、三人は歩いていく。
「ねえ、熱くない?」
―――★―――
「つまりだ、一人を肩に乗せて跳んで、上の奴が下の一人を蹴ってあの女を捕まえる」
その提案に、マリアは困った笑みを浮かべる。
「……じゃあ、どっちが行くの?」
「俺が上だ、早くしろや」
ザンがそう言いながら、リサに引っ張られ続ける。
「この女の方がどうにも、馬鹿力だからな……」
「なんで方針が決まったのに前に行こうとするのー……」
「……良いのか? あの竜巻飛礫とナイフの飛び交う中に突っ込むんだぞ……」
「関係ねぇよサル」
カチンときながらも、トーキは続ける。
「まあとにかく、二段ロケットだ、埒外の二人の夢の技術だ」
「君、怒ると訳分からない事言うの?」
咳払いし、話しを変える。
「気をつけろよ、リサ」
「うん……大丈夫だよ、トーキ」
―――★―――
上空から石やナイフを射出し続けながら、木の上から二人を探し続ける。
「見えねえ、なぁ、ぁぁ……」
反響し続ける声で、ぶら下げてるライラに話しかける。
「そうだねぇ……コソコソ、虫みたぁい……くひひ」
容赦なく掃射を続けながら、周りを見渡す。
「あの黒いドロドロ、地面食べてる……」
「あ、ぁぁ……? おお、まじだ、ぁぁ……」
中心で暴れまわっている黒いスライムの下の地面は、堀のように抉られ、スライムは反比例して巨大化しつつある。
「流石に、あれは無理だなぁ、ぁぁ……」
「だねー、本物をささっと探して帰りたいねぇ」
「っどぉぉぉっりゃぁぁぁああああ!」
金色の物体が大声と共に跳び上がり、更に上にいた黒い物体が更に跳ぶ。
「うきゃぁ!?」
「う、おぉぉ、ぉぉッ!?」
「死ねぇぇ……落ちろコラァァ……ッ!」
枯れた声で、ザンはライラの足首を掴む。
「離、せッ! こッのぉぉ!」
骨を握り潰されながらも、決して手を離さずにITEMでの攻撃をザンに当て続ける。
背や頬にナイフが突き刺さり、容赦なく飛礫が上から浴びで続ける。
……だが、それでもザンは手を離さない。
「……ッチ……ライラ、ァァ……」
「な、に!?」
「ドロドロが来やがった……まずいまずい……」
「ガボボ、ゴボバァァァッッ!!」
周りの参加者を無視しながら、何故か真っ直ぐに黒いスライムは三人に向かい迫り来る。
その道の途中にいた不運な参加者が、また一人黒い液体に飲み込まれる。
「まずい、まずいまずい……」
「落ちろ、クソがぁ……ッ!」
「い、痛い痛い痛い痛い!」
空中で暴れる三人に、黒いスライムの触手が迫る。
「悪いな、ぁぁ……ライラ、ァァ……」
「……は?」
掴んでいた手とは違う、左手が現れる。
……そのまま、指輪を抜き取り、両手とも風となって消える。
「楽しかったぜ、ぇぇ……じゃあ、なぁぁ……」
「この、裏切りも―――」
横合いからの触手に、ライラは飲み込まれる。
「ぐ、ぁ……ッ!?」
ザンの左腕も、同じように飲み込まれ、全身が引きずり込まれかける。
「クソッ!」
肘を逆側に曲げへし折りさらに限界まで捩じり、すぐさまスライムを蹴り左腕を引き千切る。
そのまま頭から落下したところに、リサがザンの身体をキャッチする。
「大丈夫!?」
「……うるせぇ……喚くな、騒々しい……」
リサの腕から逃げるように這い出し、右腕からゆっくり地面に降りる。
「リンジィ……頼む……」
「う、うん!」
その言葉とともに、どこからか少女が現れる。
少女は手をかざすと、かすかに光り始める。
「いやいやいや! 悠長に治している暇ないよぉぉぉ!!」
リンジィとザンの手を取り逃げようとする。
「リンジィは俺がやる……絶対にはなさねぇ、から……」
鬼気迫るザンの意思を汲み取り、リンジィを抱きかかえたザンをさらに抱きかかえる。
「ガガガァァァァァァ! ゴブッ、ゴボァ、ガボァァァァ!!」
背後から黒いスライムが襲いかかる。
木をなぎ倒し、リサのすぐ後ろを追いかけてくる。
土や石、木を飲み込み肥大化し続ける。
「やばいやばい、これはやばいよぉぉぉ!!」
―――★―――
「……あの黒いのも来るとは……」
「そうねぇ、想定外だわ……」
木の陰に隠れていたトーキとマリアは心配そうに三人を見る。
リサは凄まじい速度で逃げてはいるが、障害物を関係なしに進み、且つ肥大化していく黒いスライムには分が悪い様に見えた。
「……どうしたものか」
「私は、ああいう化け物は苦手だわ……ITEMも効かなさそうだし……下水の臭いがするし」
「下水の臭いを……なんでもない」
言いかけた言葉を引っ込め、トーキは中央の方を見る。
……暴れていた黒いスライムが消えても、何人かは戦い続けている。
「あの竜巻……いつのまにか消えた」
「黒いドロドロのせいで、見失ったわねぇ……」
不安そうにマリアは辺りを見渡す。
「……あらぁ?」
「どうしたんだ」
「そう言えば、ライラちゃんはどこに行ったのかしら……?」
「は? ライラ?」
―――★―――
「っとぉ……あはは、危なかったぁ、流石にビビった」
冷や汗を掻きながら、地面に着地する。
黒いモッズコートをはためかせ、後ろを振り返る。
「流石に、追っては来ないか、あはは、いやぁ、焦った焦った」
先ほどの戦闘を思い出し、爽やかに笑う。
「……んで、なんでお前がいるんだよ……ライラよぉ」
「ひ、ひぃ……」
木を背にして怯えているライラに、その木を蹴りつける。
その衝撃で何枚かの葉が落ちる。
「ライラもどきか? そっくりさんか? 双子か?」
「ひゃ、ひぃぃ……」
「……本物じゃあねえか、まあ、恨みはねぇがよ、ケジメだ」
そう言い、手をライラに差し出す。
「こ、この子だよ……マリア達に助けを求めたの」
「あん?」
ふと視線を横にずらすと、不健康そうな男がこちらを指差していた。
……後ろにはハンチング帽の男と、奇妙な服装の男。
正確に言えば、ライラを指差していた。
「どちらさんだ?」
「ヨシヤって言います」
「僕はピーター」
「キューシローです」
「自己紹介かよ、ははは、面白い奴等だな」
モッズコートの男は足を下ろし、手をポケットに突っ込む。
ニヤニヤと笑いながら、三人の様子を抜け目なく観察する。
(ハンチング、手はフリー……装飾品の類は無し……)
ニヤつきながら、半歩後ろに下がる。
(サムライ、手はフリーだが腰にカタナ……)
さらに一歩、距離をとる。
(ナード、手はフリーだが……頭のアレは何だ?)
三人を観察し終わり、さらに口元を歪める。
「『DISASTER』ッッ!!」
その掛け声と同時に、モッズコートから手を抜き三人に向ける。
両手が二つの竜巻となり、三人を襲う。
「『日緋色金』
ほぼ同時にキューシローが刀を抜き、一瞬の内に男の懐へと踏み込んでいた。
「あ、ぁぁ……!?」
「はぁぁぁ!」
「ぐわぁぁぁぁぁ、ぁぁ……!!」
刀を振り抜き、胴体を断ち切る。
「やぁ、らぁ、れぇ、たぁ……!」
そのまま、男はモッズコートごと上下に二つに断ち切られる。
「な、ぁぁ……わけねぇだろばぁぁぁぁっか!!」
「なぁッ!?」
暴風が、キューシローを襲う。




