有象無象の、狂喜乱舞。
……ヒバリか、オシドリだな……。
「なあ、アリベルト」
しかし……この世界は動物がいなくて寂しいな……。
「なにかな?」
いっそ、鳥を比喩にするのは止めるか?
「中心の少し手前で、私たちは隠れよう」
……風、風か……うん、風だな。
「ああ、そうだな……機を見て何人か倒させてもらおう」
風、風……。
「……一陣の、無色の風、空を穿つ、無情の風……無欲な空は、無翼の風が青に穿つ」
うん、中々良いのがひねり出せたな……。
「どうだ、ライラ女史」
「私に詩の才能は無いから、風々言い過ぎって感じしかしない」
なるほど……確かに、さて……。
「……まあ、着くまで詩でも捻っててよ」
「そうさせてもらう」
―――★―――
「…………」
「…………」
「…………………………暑くない!?」
て言うか熱い!
「しゃらっぷカリンちゃん」
「ユエちゃん! 私ゃそろそろ我慢の限界だぁ!」
「昨日我慢できたじゃん」
うわーお、かつてここまでユエちゃんが冷たかった事があっただろうか。
て言うかあっつい!
……あれだな、ライラちゃんが来てから冷たくなってる。
「……何考えてるか分からないけど、別に徐々に温度が上がってるわけでもないし、それに結構元気じゃん、辛抱して」
「な、なんかこう……メンタルの問題なんだよ!」
伝われ!
伝われ私の情熱!
……熱い!?
「え、えっと……休憩しますか?」
「……そうだね、ユエちゃんも寝なよ、お昼寝」
うーん、そんなに眠たくはないんだけどなぁ……。
「砂も熱いし、寝付けるかなぁ?」
「とにかく落ち着いてよ、起きたら三人で話し合おう」
まあ、お言葉に甘えておこうかな。
「それじゃあ、お休―――」
「わ、もう寝ちゃいましたね」
「……ね、じゃあ……ちゃん、ちょっと……」
「……い? ……でしょう……? わた……」
「ライ……本当……なにを……―――」
「――――――」
―――★―――
あれ?
「ヨシア君、マリアとザンとリンジィは?」
え、追い抜いちゃった?
「ん、いや……うーん……どこかに行った」
「はぁ?」
なーにやってるんだ、あの三人。
落ち着きってもんが無いのかね、やれやれ。
「あれ、三人は……」
「どっか行っちゃったんだって、三人とも」
……ほーら、リーダーも驚いてる。
「え、っと……なんだっけ……女の子が助けを求めてきて……それで、助けに行った」
「へー、世の中困った人……じゃなくて困っている人は多いんだねぇ」
「そっちにも、困ってる人来たんだ……どんな人?」
「そうですね……女の人でした」
リーダーもこう見えてアンポンタンだなぁ。
なんだよ、特徴聞かれて性別答える?
「真っ黒い髪に褐色の肌、輝くような白い歯の女性だったよ」
「……ふーん、困った人って皆同じ様な人なのかな?」
……んん?
そっくりさん、双子、それとも兄弟姉妹。
はたまた……?
「自分を増やすITEMなんでしょうか」
「そうだねリーダー、で……あの根っからの都合の良い人のマリアやリンジィが釣られたのかな」
「……言いつけるよ、ザンに」
「それは勘弁して欲しい!」
最悪死んじゃう。
殴られて死ぬ。
「まあバカでしょ、人助けなんて……リーダー、どうする?」
「見知らぬ人は見捨てますが、仲間は助けましょう」
優しいんだか冷たいんだか……両方か。
わはは、まあ人間らしいっちゃぁ人間らしい。
「じゃあ、総出で助けに行くかい?」
「……そうですねピーター、救出は迅速かつ俊敏に、手早くかつ手っ取り早く」
「速さ求めちゃうんだからー、よっくばりー」
「…………ま、まあ……あの三人の為、だからね……僕も、頑張るよ」
オールスターだ、中々豪華なんじゃないかな?
「本当は一人くらい残して行きたいんですけどね……」
「しょーがないよ、この三人ならある程度のお邪魔虫は瞬殺できるだろうしねー」
負ける気がしないね!
―――★―――
……森の中を、数人の男女が進んでいく。
「なぁ、前の二人組みはどうだ」
「んー? 気づいてないよぅ」
茶髪を逆立てた男の質問に、真っ黒な髪を腰まで伸ばした少女……ライラが答える。
「くふふ、むふふふ……そろそろ、中心だねぇ」
可笑しそうに、口を押さえながら彼女は笑う。
「それじゃあそろそろ散開か?」
「だな……くれぐれも、始まる前に戦闘はご法度だぞ」
「わかってるってー、ハイスコア目指してるんだからねー、頑張らないとねー」
「……っすね、じゃあ僕等も」
一人を残し、四人は左右に進み始める。
……残ったのは、ライラ一人。
「くふふ、むふふ……待ってろよライラ……ライラが、本物になってあげるからねぇ……くふふふ、むふふふ」
首から下げていたロケットを胸元にしまい、懐から指輪を取り出しそれをはめる。
「前の二人組みも、カモフラージュが頑張ってねー」
そういい、やや前方を歩く二人を見つめる。
……しかし、尾行していたライラは首を捻る。
「そういえば……二人の名前、知らないや……どうしようかなぁ」
―――★―――
……歩いていた二人は、次第に人の気配に気付く。
やや前方の方、人間の声が聞こえる。
「リサ、シール貼っとけ」
そう言い、前回戦って奪った西洋剣を抜く。
頷き、リサもシールを三枚張り、残りの二枚もいつでも張れるよう準備をする。
すると、倍の倍の倍、8倍にまで強化された聴力に前方の声が飛び込む。
「……誰か、戦っているっぽい?」
「…………リサ、五枚張りでいけ……何かあるかもしれない」
トーキの指示通り、即座に他の二枚を腕に張る。
そして、そのまま辺りの情報を得ようとする。
「有象無象の黒群ッッ!!」
二人の前方、森の開けたであろう地点から、そんな声が聞こえる。
「聞こえた?」
「聞こえた」
お互いに頷き、さらに警戒を高める。
「……何人か倒せるなら倒そう……」
「分かった、でも危なくなったら……お姫様抱っこでダッシュで逃げるよ!」
確認するように言うリサに、トーキは苦笑いしながら頷く。
……最後に二人が深呼吸すると、同時に走り出す。
―――★―――
……ゲームフィールドの中心、七つそれぞれの地面が中心に集まり、真っ白い床がその中心にあった。
まるでダーツの的の様な広い開けた場所で、異様な物陰が蠢いていた。
「ゴボ、ゴボボ、ゴボッ、ゴボァァァァァア!!」
コールタールの様な、黒く艶やかな液体の中から溺れている様な絶叫がもれ聞こえてくる。
その絶叫を聞き寄ってきた参加者は警戒しながらもその様子を見守る。
「ボガァァ、ゴボ、ゴボボ、ボゴゴゴォォァァァ!!!」
「た、タス、たすけ……」
「ッ!?」
その異常に気付いたのは、鋭くなった聴覚を得たリサだけだった。
「な、何か……不味いかも……」
「……そう、だな……少し距離を―――」
「ガボァァァァァァッッ!!!!」
トーキが一歩下がると同時に、黒い粘性の触手が辺りを飲み込もうと伸びる。
不用意に近づいていた二人が、その触手に飲み込まれる。
……その黒い液体の正面には、よく見れば小さい手の平がびっしりと模様のように浮かんでいた。
「な、何あれ……」
「ッ! リサ、伏せろ!」
西洋剣で、飛んできたナイフを野球ボールの様に弾き飛ばす。
「くふふ、むふふふふ……昨日ぶり、二人ともぉ……」
黒く長い髪に、褐色の肌……笑みをこぼす口から見える真っ白い歯の少女……。
「私はライラ! このパーティーの首謀者だ……くひひ」
いつの間にか手に持っていたナイフを構えながら、ライラと名乗った少女は破顔する。
―――★―――
ははは。
「始まったか?」
いやいや、想像よりもおぞましい奴がいるもんだな。
「そうだね……アリベルト、準備は……」
「抜かりはないさ」
ここまで、俺の性と合致したITEMはない。
「それじゃあ、敵がいい感じに疲弊したら、二人で叩こう」
堅実だな。
「ああ、あいにく目立つことは苦手、隠れるのは得意さ」
ははは。
自嘲が過ぎたかな。
「灰燼纏う淑女のドレス、一時、針がこの胸を刺すまでの一時、幻想の社交場に私を隠して欲しい……」
念の為だ、大盤振る舞いにな。
陽気に、詩でも歌って行こうじゃないか。
「……まあ、アリベルトは好きにしててくれ」
「ああ、ライラ女史、君は俺の扱い方が分かっているね」
殺伐としていても、陽気さは無くしたくないからね。
―――★―――
始まったかな?
「早速ライラが一人死んだみたい」
「殺伐としてんな」
……始まっちゃったか。
「このまま、いい感じに荒れた後に行こうか」
「まあ、妥当だな」
始まってしまったからね。
まあ、始め方を決められるのは私たちの優位性なんだからね。
だから、まだ始めないのだ。
「それにしてもよ、ボス」
「ほいほい?」
「俺としちゃ、ちょこっとくらいよぅ、監視っちゅうかな?」
始めたがりやめ。
「しょうがないね、じゃあ……誰か保護者役を」
……名乗り出ないってどう言う事よ。
ライラは手元に置いておきたいしなぁ……。
「……フミエ、ジャックについて行って」
「うぇ……やだ」
辛辣かつ端的なお言葉だこと。
一言で断られるジャックのことも考えてあげなきゃ。
「じゃあぁ、私が行きまぁす、よ?」
「任せるよアントニア、出来るだけ逃げてね?」
「まっかせてぇ、じゃあジャッ君?」
「おーう、チラッと見てくらぁ」
―――★―――
「……前の方、騒がしいな……リンジィ、来い」
不安げな彼女を傍らに寄せると、コートの中に彼女は潜り込む。
「うーん? そういえばライラちゃんの友達ってどんな子?」
耳を傾けても何も聞こえなかったマリアは、話題を変えるようにライラに尋ねる。
「えっと、元気な子で……!?」
突如横を駆けていった人影を見て、ライラは飛び上がりそうになる。
「うわっと……まさか、今の子? それとも今のが敵?」
マリアの問いかけに、ライラは首をひねる。
「ご、ごめんなさい……よく分からなかったですけど……違うと思います!」
よく分からなかったと言うわりに元気よく否定する。
そんな様子を見て、マリアは細いパイプを取り出す。
「何が起きてるのかしらねぇ……あー、怖」
「……帰るか」
「そうねぇ、帰りましょっか」
ザンとマリアの雑談に、ライラは顔を青くさせる。
「二人とも! 困ってるでしょ!」
「そうだ止めろ、困らせるな」
即座にリンジィの味方になり、マリアを攻める。
「はいはい、それじゃあ皆、警戒してねー……」
いつもの調子に呆れたように肩をすくめ、中心へと進む。
―――★―――
「リサ、後ろの警戒は任せた……いざとなったら」
「抱きかかえて逃げるよ!」
まったくもって安心だ、無様だろうけどな。
さて……。
「ナイショ話は終わり? くふふふふ」
「ああ、待たせて悪いな」
さて、あのナイフ……明らかにさっき投げていたデザインのままだな……となると、ナイフを幾つか作り出すが能力か?
「それそれそれっ!!」
「うおっ!?」
ふんだんにナイフ投げか……ビンゴみたいだな。
狙いは酷いが、数が不味い。
最悪リサに当たる。
「……立ち位置交換する?」
「一応、まだいける」
俺には目標がある……稼いで置かないと、泣きを見るからな……。
「あーでも、不味いかもね……あのドロドロ、成長してる……」
「わーホント、早めに決着をつけなきゃねー」
ヘラヘラヘラヘラ……嫌いなタイプだな。
新しいITEMの露にしてやる……。
「……くひひ……『刃先の舞』……踊ってみる?」
「誰が!」
狙いはお粗末、距離を詰めたら勝ち……ITEMの本体は、おそらく右手の指輪……後はタイミングだけだ。
このまま、少し凌げば……。
「おんなじ事を考えてるね? くふふ、同志だね、凌いで殺す、でしょ? むふふ……良いよ、どっちが上手に凌ぐか試してみようか!」
「っ!?」
まさか、自分から距離を詰めてくるとは……!
だが、そのまま勝たせて……っ!?
「このITEMはさぁ、近寄って殺すのがいっちゃん楽なんだよね」
うおッ!?
いきなり、現れただと……ッ。
「くっ、まさか……ナイフの出現と射出が真骨頂か……」
ああ、面倒くさい……。
「リサ、手伝え!」
「泣き言はっやーい! くふふふふ!」
「オッケー! おりゃぁぁっ! うわっ!?」
なっ!?
「くふふ、むふふ……アリガト、助かったよー……」
な、なんだ……何が起きてリサが吹き飛ばされたんだ……?
「くひひひ、そいじゃあ……がんばろっか、殺し合いをさ!」
―――★―――
「……見えるー?」
エリナ見上げながら、木の上によじ登っている9thに話しかける。
「便利な便利な金蛇銀蠍どうしてあの怪力女には通用しなかったのー、っと……見えたよー」
悲しげに歌を歌いながら、中心を眺める。
「黒い変なのがいるねー……もう始まっているっぽい?」
「おうおう、やっぱりこのゲームに休める時間なんて無さそうだな」
4thが嘆くように呟き、5thがそれを苦笑する。
「で、どうします? いくんですか?」
「えー、行かないかな、私達乱戦苦手だしさー、混戦と乱戦は違うからねー」
5thの質問に簡潔に答えて、弓を引き絞る。
その先には、首の骨を折られたライラが木を背にしながら立たされていた。
「堕天矢ッ!」
その脳天に矢が突き刺さり、死体がガタガタと震え始める。
「……成功かな?」
「フランケンシュタイン博士だな、ホラーだぜ」
「リビングデッド、ですね」
「えー? 下にゾンビいるのー? やだ、怖くて降りられないんだけど、大丈夫? 噛んだりしない?」
口々に感想を述べつつ、ゾンビライラの周りを囲む。
「普通の人間ならITEMの効果も切れるかもしれないし、そもそも死んだらアウトだけど、この死体なら雑に扱っても大丈夫!」
しかし、エリナの発言に上から9thが疑問をぶつける。
「それなら、これからは死体を操るゾンビ軍団長になるの?」
「難しいかな、だって普通の参加者ならすぐに消えちゃうしね……でも、この子は分身的な感じだからできる荒業だからねー」
そう説明し、ゾンビの体を動かし動作確認をする。
……すると、不思議そうに5thが尋ねる。
「じゃあ……分身を作るITEMを確保しにいかないんですか? だってほら、安定的にゾンビを作れるし」
そう言われ、エリナは目をむいて無言になりながらも驚愕の顔を作る。
他の三人はただ驚いてフリーズしているエリナを見守る。
……十数秒して、腰を抜かして地面に尻餅をつく。
「み、みんな! ITEMを奪ってこのゲームを勝ち抜こう!」
「わー……」
「閃かなかったみたいだな」
「ねー、ゾンビまだいるのー、噛まなーい?」
―――★―――
「……ははは、俺が心配症でよかったなぁ、ぁぁ……」
黒い竜巻の中から、何度も反響し続けているような男の声が聞こえる。
人と同じサイズの竜巻は、腰辺りにまで浮き威圧的に中の黒い石をぶつけ合い続ける。
その下で、尻もちをついたリサがその竜巻を見上げる。
「へはは……は、はぁ……連れて行ってやろうかぁ、ぁぁ……?」
「……なるほど! 面白いねぇ! くひひ!」
黒い竜巻の中の声に頷き、トーキに一太刀あびせナイフを二本出現させ放ちながら、その横を駆け抜ける。
「な、まて!」
「ホールドアップはこっちのセリフだぁ! おらぁぁ!」
一瞬だけ竜巻の回転速度が増し、黒い飛礫がリサとトーキを襲う。
辛うじて西洋剣でトーキは防ぎ、リサは座り込んだまま顔に飛んできた石をキャッチする。
「上へぇ、ぇぇ! 参りまぁ、ぁぁっす!」
「きゃっほーーー!」
下の辺りから日焼けした褐色の手が伸び、ライラの手を掴み空へと上昇する。
「晴れ時々ぃ、ぃぃ! 『DISASTER』ッ! ってかぁ、ぁぁ!?」
「ついでにナイフもねぇ! あははぁ! 血の雨だねぇ!」
下の二人に、黒い飛礫と幾つもの投げナイフが降り注ぐ。
「トーキッ!」
素早くトーキの腰にタックルを繰り出し、そのまま木が生えている辺りまで逃げ込む。
トーキが小さく呻くが、二人とも無傷で飛来物を躱す。
「いって……けほっ」
息を整えながら、上空で旋回する二人を睨む。
「困ったな……あそこまで距離を離されるときついなぁ……」
「跳んでも足りないのか?」
「まあ少しくらいなら届くと思うんだけどね……あの距離だと反応されて距離が広まるかなぁ……」
困った顔で肩をすくめ、上空に浮かぶ竜巻を睨み付ける。
そうしている間にも、上から絶え間なく滅茶苦茶に何かしらが投げられている。
「あぁ?」
「あれぇ?」
背後からの二つの声に、二人は素早く振り向く。
「あぁ……っと……?」
「ほら、この前リーダーが友達探しをしてあげた二人だよ……あれ、そのお友達は……?」
現れたのは、黒いコートの男とプラチナブロンドの女性。
「確か……ザンと、マリア、だったか?」
「結構派手にやってるみたいねぇ、手を貸しましょうかぁ?」
「え、良いの?」
「……ああ……稼ぎ時だからなぁ……」
ザンは凶悪に笑ながら、指を鳴らしながら中央の広場に向かい歩き出す。




