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後悔しているから、僕は全部殺す。  作者: 鬼羅
4日目、中央戦線。
25/39

詐術師による、冥府魔道へのご案内。




カリンちゃんは熱い女の子だ。


リアクションも熱いし、熱い人間だ。

このゲームが始まって最初に出会った人物だけれども、驚く私に対して優しく……多分微笑みかけてくれた。


曰く、泣いている人の味方らしい。


私はカリンちゃんに対して涙目になったのだけれど、どうにも殺し合いを拒否するか弱い女の子だと誤解したらしい。

……とにかく、人情に篤い彼女は……暑苦しい人だ。

それで……暑がりな人だ。


「……五分、暇だなぁ……」




―――★―――



……もうスタートか……。

「って、あっつい!?」


―――場所は岩場、半径は80mほど……がーんばってねー。


「熱い熱い熱い熱い!!」

こ、こんな地獄みたいに熱いなんて……速攻で終わらせてやるぅ!


「『篝火よ、冥府(ウリ)魔道を照らせ(エル)』!!!」


これで瞬殺!

こんなところに五分もいるなんて耐えられない!

「うおぉりゃぁぁぁぁ!!」

熱い熱い熱い熱いぃぃぃぃ!




―――★―――




「だぁぁぁぁ!?」


炎の腕から逃げながら、できるだけ距離を取ろうとする。

前までは肘の辺りまでしかなかったが、いつの間にか肩の辺りまで炎の腕が現れていた。


……そして何より、既に近づくには耐えられない熱があり近づくのは困難だと判断し時間いっぱい逃げ回ることにした。


「どわぁぁ!?」

可動範囲と射程が長くなった腕に、手を焼きながらどうにか直撃を避ける。

幸いにも攻撃は出鱈目で、あらぬところを殴ったりしているので回避はたやすい。

だが、いかんせんその攻撃範囲はリサと比べたら段違いだ。


「くっそぉぉ……!」

徒手空拳でしか戦えない彼女としては、一方的に攻撃されてしまう炎の腕とは相性が悪い。

「……あ、あれぇ…………?」


……徐々に、その炎の腕は肩から右胸の半分ほどが出来上がっている。

このままいけば、終了間際には上半身が完成するだろう。

「あんなのインチキだーーー!」




―――★―――




熱い、熱い、熱い……熱いよぉぉ……。

なんで、こんなに熱いの……?


「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」


熱い、熱い熱い熱い熱いぃぃぃ!!

助けて、熱いよ……ユエちゃん…………あつい……。


「アア、アアア、ア、ア、ア、アアアァァァァァァ!!!」


なんで、こんなに……熱いの……。

私だけ……私だけ……私、熱い、熱い、熱い熱いぃぃぃ……。

手も、足も、顔も、胸も喉も目も頭も心臓も!


「ウウゥァァァアアアアアアアアアアア!!!!」




―――★―――




「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」


左腕の二の腕の半分ほども出来上がり、頭らしき部分からはうめき声の様な絶叫を上げる。

右腕と未熟な左腕を出鱈目に振り回し、火の粉や岩が辺りに振りまかれる。


「アア、アアア、ア、ア、ア、アアアァァァァァァ!!!」


その光景を、ずっと遠くでリサは見守る。

……後ろに進むことは出来ず、後は右か左にしか進むことは出来ない。


「……何も見えていないのかな」

相変わらず出鱈目な攻撃をする炎の腕……いや、炎の巨人をみながらリサは呟く。

頭部がほぼ完璧に出来上がってり、何度かリサと目が合ったにもかかわらず攻撃は変わりなく出鱈目なままだ。


最初は恐怖心しかなかったが、離れて観察すれば苦痛に悶えているようにしか見えない。

……その姿に、リサは少しだけ憐みの感情を抱く。


「ウウゥァァァアアアアアアアアアアア!!!!」


しかし、リサには彼女を救う術はない。

「難儀だなぁ……色々……おや?」

ここに来る時と同じ多少の不快感がどこからか出てくる。

彼女は本能で、時機にこのミニゲームが終わる事を察知する。


「あれ……これ前にもあったっけ?」

ふと疑問に思いながら、そのまま両腕が出来上がった炎の巨人を見つめる。




―――★―――




「あっつ……ただいまぁ」

「お帰り、ケガは? 相手は倒した?」

「大丈夫だけど……倒せなかった」

そっか、まあそんなもんだよね。


……それにしても。

夜だと派手だなぁ……。

目、耳、鼻、口、全部から炎が出ているって……女の子のビジュアルじゃないよね。

大変だ。


「ねえ、どうやって戦ったの?」

「へ? ……えっと……気が付いたら周りが燃えてた」

ふむふむ、そうなると……今までの状況とを照らし合わせて考えると……。


カリンちゃんはITEM発動未発動に関わらず常に高温に晒されているが、夜は熱さは感じないらしい。

それで……全力でやったらどうにも何もわからない、と来たか。


「他の人に利用されないでよ? カリンちゃん」

「分かってるよー、ユエちゃんみたいないい人以外には私いうこと聞かないからさー」

「私は生き返りたいんだから、カリンちゃんいなくなったらどうしようもないんだからね? 本当に」

根が良い人だから、どうにも心配だなぁ。


正直無差別すぎて、傍に置くのも怖いんだけど……まあ、カリンちゃんも生き返らせてあげないとね。

利用しているんだから、私だって貢献しなきゃ。


……こんないい人、ちゃんと報われなきゃ……。




―――★―――




「……シスター、そろそろ移動しようぜ」

「へ? な、何でですか?」

「住み心地が良すぎる上に目立ち過ぎだ、欲しがる奴と群がる奴でじきに動物園か地獄になる」

ど、動物園?


……よ、良く分かりませんが……とりあえず、ここにいると駄目ってことですね。

「分かりました、それじゃあどこに行くんですか?」

「……なんだか良く分かんねーけど、とりあえずこっちだ」

「よ、良く分からないのに行くんですか?」

「ああ、俺達が組めば敵なしだぜ?」

わ、私は手を貸しませんってば!

……と、言うのは黙っておきましょう……また悪魔の囁きを聞くのは疲れますし。


「それじゃあ行くぜ……」

「は、はい……」




―――★―――




……視線を感じ、どこか居心地が悪そうな顔をしながら後ろを振り向く。

「…………あ゛?」

「…………」

ザンが鋭い目線で、マリアを睨み続けていた。

……逆に、彼の手を握っていたリンジィはニコニコ笑顔だ。


どうにも、先程親しげに話していたのが理由らしい。

「…………ふぅ」

肩をすくめ、やれやれと呟く。

そもそも手すら握っていないのに、そんな目で睨まれる筋合いは無いと彼女は思う。


「あのね、ザン」

「あ?」

言いまいとしていた言葉を、遂にザンにぶつける。


「過保護よそれ、窮屈で可哀想だわ」

一瞬なんの話しか考えたザンだが、次第に目付きがさらに悪くなる。

「関係ねぇ、それに……リンジィはお前みたいなピンポン頭に耐性がねえから悪影響を受けるだろが」

「……それ、軽くて空っぽってわけ?」

言動に不快感を覚えながら、リンジィに目を向ける。


「だ、ダメだよザン……喧嘩しちゃ……」

「良い子ねぇ、リンジィちゃんは」

相方のザンとのギャップを皮肉がましく微笑む。




―――★―――




リサからの話を聞き、腕を組む。

「……炎の巨人か」

「うん、かなりきつかった……岩とかちょっと溶けたんじゃないかな?」

トーキはリサから渡されたパンをかじりつつ、二人で寝床を探す。


基本的に野宿だが、せめて少しでも安眠できるような場所でないと昼間の行動にも差し支える。

「この辺りの草は柔らかいよ?」

「……じゃあリサ、お前から寝てくれ」

「お言葉に甘えて―」

ゴロゴロと体を転がせ草を潰し、そのまま丸まるように体を抱え眠る。


……残ったなトーキは、木を背もたれにして辺りを警戒する。

気配なんてものを感じられるほど鋭敏ではないが、生き物がいないこの状況ならば物音のする方向に警戒さえすればいいだろうとトーキは判断する。


「…………っ」

数十分後、トーキは何やら物音を聞く。

耳を澄まさなければ聞こえない、だが明らかにこちらに接近する音。

……風が木を揺らすのではなく、一歩一歩徐々に大きくなる足音。


(……奇襲するか……? 今なら不意を打てるが……それともリサを起こして離れるなり襲い掛かるなりするか?)

頭の中でいくつもの案が浮かぶ。

(1人で勝てるかどうかは分からない、それに物音を立てて気づかれたら優位性がなくなる……)

そうして、結局トーキは奇襲を仕掛けることにする。


……だが……。

「まあまあ、落ち着きなって……起こしちゃ可哀想だよ? 私は今眠いし戦う気は無いよー」

そういって両手を上げて接近し始める。

トーキは警戒を解かない。

その様子に少しだけ嘆息しながら、遂に顔が見える距離まで接近する。


「ま、ま。通りがかっただけ……挨拶しに来ただけだよー」

「……なら名を名乗ってUターンでもしたらどうだ? ……いや、名乗りもしなくていい……帰れ」

どんな切っ掛けからITEMの攻撃に繋がるか警戒しているトーキは、とにかく何もなせない様にする。


……その様子に肩をすくめながら、踵を返す。

「名乗りたかっただけなんだけどなー」

そう言い残し、また暗闇の中に消えていく。




―――★―――




草むらをかき分け、仲間たちと合流する。

「ただいまー、何にも異常ナーシ」

「ふーん、じゃあ交代だ……僕が行くよ」

仲間を見送りつつ、雑魚寝する仲間を見守る。


……全部で五人の仲間で、巡回と寝床の監視の二人の警戒態勢で夜を過ごそうとしていた。

「いやぁ、なんだかイケメンだったなぁ……むふふ、恋多き女の子は困っちゃうねぇ」

ニヤニヤ闇夜に笑いながら、彼女は上着の内側のポケットに入ったITEMを見つめる。


「あの神様、私にこんな特別ゲームを課すだなんて……わかってるなぁ」

声を潜めながら、クスクスと笑う。

手に握られたITEM……ロケットには、「トリックスターへ」と刻まれていた。


「くふふふふ、むふふふ、ド派手に行こうじゃないか……いっぱい死んじゃうだろうなぁ……っ!」

口元を歪め、おかしそうに腹を抱える。

「決めた、決めたぞぅ……戦場はずばり……このゲーム盤のど真ん中でおっぱじめよう!」


神の尖兵は、何かを企みながら笑う。





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