水面に踊る、舞い歌う。
「まっず……」
立ち上がりながら、体を伸ばす。
「何が起きたのかはわかんないけど……」
柔軟を終え、わざとらしく深刻そうな顔をする。
「一撃で消されちゃった……こりゃ、3rdさんと4thさんに頑張ってもらうしかないかな」
「……消されたのか」
奥から、1stが呼びかける。
「んー、ごめんねー」
軽い口調で、頭を下げる。
「ばれたか?」
「わかんない……あー、でも多分ばれてないよ、一番近くだからぶん殴られただけだと思う」
「……不幸中の幸いか……インターバルは?」
「いやぁ……日も出てないし、晴れるまで駄目だね」
肩をすくめ、苦笑を浮かべる。
「一応エリナ……2ndのところにいけ、何かあったら死んでも守れ」
そう言い、外へと歩き出す。
「……出るの?」
「ああ……預かっておけ……おっと」
何か思いついたのか、振り返り。
「1stとして命令する『ITEMの破壊をおよび他者に奪われることを禁ず』……」
その言葉を発した瞬間、5thの体に激しい重圧がかかった様に負荷が生じる。
「……ッ……りょー、かい」
「行ってくる……」
両手に何かを携え、大樹の中から森へ出る。
―――★―――
「リサ、ステルス女は?」
「取り逃がしちゃった……多分、この雨はステルス女のITEMだと思う」
そう聞き、少しだけ渋面を浮かべながらも。
「助かった、流石に三人がかりは死んでたと思う……」
素直に、感謝を告げる。
「えへへ、そっか……ん?」
相対する敵を見て、違和感を感じる。
「……女が一人消えたな……」
「だね……瞬間移動?」
さあ、と肩をすくませる。
「っち、面倒な……後ろに気を付けろリサ、一応な」
「OKトーキ」
拳を構えながら、敵を見定める。
「リサ、耳を貸せ……一人ITEMの情報を教える」
傍により、相手を睨みながら小声で伝える。
「……うん、オッケー……トーキはどっち行く?」
「俺はあの眼鏡に行く、リサは残りを抑えておけ」
首肯し、そして走り出す。
「うっりゃぁぁぁあああああ!!」
「っち! 来いよイノシシ女!」
銃を構え、リサの突撃に応じる。
―――★―――
「―――舞い歌う雷ォォォォォ!!!」
白霧の中を、青白い閃光が切り裂く。
根の様にティエゴを中心に広がり、霧の中の者に雷撃を浴びせる。
「っが―――!?」
「ぐ……ッ!」
より近かった男……霧を生み出した者をより激しく襲う。
「が、ぐおぉ……誰だァ、テメェ……ッ!」
「どけ霧野郎! 邪魔だこの野郎!」
視界の効かない霧の中、まだ見ぬ、そしているはずの敵に叫ぶ。
(……誰だ……いや、それよりも……攻めるにしろ退くにしろ、今は好機だ)
やや離れた所にいた彼は、素早く立ち直る。
(リーダー? お迎えよん)
そんな囁きと、微かな甘い芳香。
(マリア……ちょうど良かった、離脱しましょう)
(オッケェ、今はちょいと軽めの成分だから、入っても良いわよぅ)
その言葉と共に、細い手に引かれ霧から離脱する。
「おらおらおらぁぁぁ!! 来いや霧野郎!」
「ってっめぇぇぇ……ッ! バチバチさせりゃぁ勝てると持ってんのかぁぁ!?」
その言葉に、ふんぞり返りながら笑う。
「俺が負けると思ってんのか!」
「なめんなよてめぇぇ! 俺が霧の中で負けるとでも思ってんのかぁ!?」
……少しだけ、霧の濃度が低くなる。
「っは! 小細工なんて関係ないねぇ! 舞い歌う雷!!!」
不敵に笑い、再び電撃を体から放つ。
……が。
そのまま、あらぬ方向に電撃は逸らされる。
「……な……!?」
「お前、雷がどの方向に進むか知らねえだろ……ははは! 無様だなおい!」
電撃が走ったのは、より霧の濃度が濃い場所だった。
「嬲り殺してやんよ……電撃馬鹿」
「こ、小癪な手を……!」
―――★―――
「……おや、こりゃ酷い」
目の前の惨状に、ピーターは愉快そうに笑う。
「ああ? ……マジでひでぇな」
同様に、遅れてザンも眉をしかめる。
「ドロドロだぁ、あはは」
「笑い事じゃあねえよ……」
その場一帯は泥化され、周囲は混沌と化していた。
「……駄目だこりゃ、底なしってまではいかないけど……入ったら出られる粘度じゃあないね」
「っち、遠回りかよ」
そう言い、歩き出そうとする。
「ちょいまち」
「あん?」
ザンを呼び止め、少し考える。
「ちょっと観察したんだけど……この泥、まっすぐ進んでるっぽいんだ」
「で?」
イラついた顔で、用件を尋ねる。
「だからさ……巨樹に向かったのか、巨樹から歩き出したかのどっちかなんだよね、この泥」
そう言われ、ザンも観察を試みる。
……確かに、ピーターの言う通り泥は川の様に一直線に伸びていた。
「じゃあ、二分の一でこれの原因に当たるわけか」
「確証はないよ? 進んだ軌道じゃなくて……こう、泥になれビーム! って感じなのかもしれないけどね」
「……あー……っち」
合点がいったような顔をした後、心底嫌そうに顔を歪める。
「なんだよ、その顔」
「頭の悪そうな説明で理解できたのがすっげぇ自己嫌悪してる」
「あはは、酷いなぁ、あはは」
―――★―――
「ん、お帰りー」
「はい、ただい―――っま!?」
熱い抱擁で、エリナは5thを迎える。
「……なるほっどねぇ……」
そのまま額同士を当てながら、薄く笑う。
「混沌としてるねぇ……上から見てたけど、結構入り乱れてるよ」
愉快そうに笑う。
「とりあえず4thと3thには自然な感じで抜けて貰おうかなぁ……」
「そうですね」
うんうんと、エリナの意見を首肯する。
「……あ、そうだ」
何か良い事―――表情はとても悪いが―――を思いついたのか、口を歪ませ笑う。
「単語帳、貸して」
「はい」
あっさりと、1stから託されたITEMを渡す。
「んふふふふふ、これでアイツの心臓を鷲掴んだも同然だねぇ……んふふふ」
愉快そうに笑いながら、巨樹を降りだす。
「……どこへ?」
「ちょっと、お出迎え」
鼻歌でも歌いそうな勢いで、根本の穴から巨樹の外に出る。
「やあ、一番乗りおめでとう!」
腕を広げ、彼女は面白そうに微笑む。
「はい、拍手ー」
その声と共に、5thが手を一生懸命叩く。
「ふふ、ちょぉっと、認識を変えた方が良いかもね」
口が弧を描くほど吊り上がり、心の底から嬉しそうに笑い、現れた人影を迎える。
―――★―――
「う、お、おおお!!」
リサの速度に追いつけず、銃を乱射するもののリサに狙いをつけられない。
「ちぃぃぃ!!」
「遅い遅い!」
翻弄し続けるリサにされるがままに、傷一つ与えられないまま弾丸を打ち続ける。
「おっりゃぁ!」
「ぐおぉ!?」
蹴りをマトモにくらい、そのまま吹き飛ばされかける。
「こ、の……馬鹿力女がぁ……!」
「ほめ言葉だね!」
一気に距離を詰め、リボルバーを持つ右手を強く掴み銃の方向を変える。
「いでで!? いだだだだ! 離せ!」
折るほどの勢いで掴まれ、4thは苦悶の表情を浮かべる。
「―――リサッ!」
「ッッ!」
突然のトーキの声に、リサはその場から離れる。
「……まだ戦えますか?」
「っつ……おう、まだ握れる」
3rdが4thの状態を確認すると、敵であるトーキ達を警戒する。
「すまん、攻め続けられなかった」
「しょーがないよ、私も無事なんだし……今度も同じ様に行くよ!」
「ああ、わかった」
「気ぃつけろ、あの女……多分かなりの肉体強化持ってやがる」
「……ええ、そのようです。僕とは相性が悪い……任せられますか?」
「任せな」
銃を構えながら、不適に笑う。
「……それでだが……さほど強化の方は警戒しなくてもいい」
視線を、痣ができた腕に移す。
「握られた時はマジで折られるか千切られるかと思ったが、そんな事も無かった」
右手の握力を確認しながら、ニヤッと笑う。
「5thを殴ったときは……多分助走のお陰だろうな。我慢できる程度だから我慢しろ」
「……そう、ですか」
小さく頷き、3rdと5htはお互いに距離をとる。
「これ、使って」
リサがそう呟くと、トーキの手を少しだけ握る。
「……二匹あげるから」
袖口から、二匹の竜のタトゥーがリサからトーキに移る。
「良いのか……?」
相手に気づかれない様に、小さい声で訊ねる。
「良いよ、これなら勝てるでしょ?」
「……ああ、勝つぞ」
覚悟を決めたように頷く。
「敵が動いた……銃の方は任せるぞ」
「オッケー、頑張ってね!」
勢いよく地面を蹴り、弧を描くようにリサはトーキから離れる。
丁度二人の位置が敵を挟むように前後に分かれる。
「……そろそろ決めるか、もうお前の顔も見飽きたんでな」
ナイフのメモリを確認し、刃を作る。
「ええ、同意見ですね……」
応える様に、西洋剣を構える。




